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Spring Will Be A Little Late This Year
- 作曲: LOESSER FRANK

Spring Will Be A Little Late This Year - 楽譜サンプル
Spring Will Be A Little Late This Year|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『Spring Will Be A Little Late This Year』は、作曲家フランク・レッサーによる1944年の楽曲。映画『Christmas Holiday』で初披露され、その後ジャズ界でスタンダード化した。哀感を湛えたバラードで、春の到来を遅らせる比喩で心情を描く歌詞を持ち、ボーカル曲として知られる。ジャズの現場では歌ものとしてだけでなく、器楽でも取り上げられる機会が多い。
音楽的特徴と演奏スタイル
多くの版で短調系のカラーを帯び、32小節AABA形式を基調とする。半音階進行やセカンダリー・ドミナントを活かした和声が特徴で、メロディは沈静と高揚を往復する抑制美を備える。演奏はバラード〜ミディアムの4ビートが主流。ピアノ・トリオや小編成コンボでのリハーモナイズ、テンションを豊かに配したヴォイシング、イントロでのルバート導入もよく用いられる。
歴史的背景
1944年、レッサーは映画音楽やポピュラー・ソングの分野で活躍しており、本作も当時のハリウッド制作の劇映画の一曲として世に出た。映画公開後は、スクリーンの枠を超えてクラブやラジオで取り上げられ、戦後アメリカの歌文化の中で“遅い春”という普遍的モチーフをもつバラードとして定着。後年、ジャズ・シンガーのレパートリーに浸透し、楽曲の寿命を大きく伸ばした。
有名な演奏・録音
初演は映画『Christmas Holiday』でデアナ・ダービンが歌唱。以降、数多くのジャズ・シンガーやピアニストが録音し、バラード・レパートリーの定番となった。代表的なカバーとしては、カーリー・サイモンのアルバム『Torch』(1981)が知られる。ビッグバンドからソロ・ピアノまで編成の幅も広く、季節のテーマを扱うコンサートでも頻繁に選曲される。
現代における評価と影響
今日では、季節の移ろいをテーマにしたプログラムや、内省と未練を描くトーチ・ソング集で重用される。和声の柔軟さから現代ジャズの語法での再解釈も盛んで、若手・ベテランを問わずライブの定番。歌詞解釈とハーモニー運用の両面を学べる教材曲としても評価が高く、ヴォーカル/器楽の双方で長く演奏され続けている。
まとめ
映画発のポピュラー曲でありながら、陰影ある旋律と洗練された和声によりジャズ・スタンダードとして確固たる地位を築いた。春の遅れという普遍的メタファーは時代や世代を越えて共感を呼び、アレンジの自由度も高い。レパートリーに加えることで、季節感と叙情性を両立できる一曲である。