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The Lady Is A Tramp
- 作曲: RODGERS RICHARD

The Lady Is A Tramp - 楽譜サンプル
The Lady Is A Tramp|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『The Lady Is A Tramp』は作曲リチャード・ロジャース、作詞ロレンツ・ハートによる1937年のブロードウェイ・ミュージカル『Babes in Arms』のための楽曲で、初演ではミッツィ・グリーンが歌ったとされる。ショー・チューンとして生まれ、その後多くの歌手やジャズ・ミュージシャンに取り上げられ、アメリカン・ソングブックを代表するスタンダードへと定着した。タイトルには上流階級への皮肉がにじみ、内容は慣習に縛られない自立的な女性像をユーモラスに描く。
音楽的特徴と演奏スタイル
形式は典型的な32小節AABA。ミディアム〜アップテンポのスウィングで演奏されることが多く、Aセクションの軽快なモチーフと、Bセクション(ブリッジ)の和声進行の対比がアドリブ構築の核となる。歌唱ではアイロニーを効かせた間合いと明瞭なディクションが要点。ビッグバンドのブラス・リフからピアノ・トリオの軽妙なコンピングまで編成適応力が高く、コール&レスポンスやトレード・フォーなど即興的なやり取りも映える。
歴史的背景
1930年代後半、ロジャース&ハートは都会的な機知と流麗な旋律でブロードウェイを席巻していた。『Babes in Arms』は若者の自主公演を描く物語で、曲自体も既成の社交や格式を茶化す視点を備える。戦前の不況を経た時代感覚とも響き合い、舞台を離れても歌のメッセージが広く受け入れられた。1957年の映画『Pal Joey』ではフランク・シナトラが歌唱し、スクリーンを通じて改めて大衆的認知を得ている。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、エラ・フィッツジェラルドの『Rodgers & Hart Song Book』(1956)がまず挙げられる。フランク・シナトラは映画版のほか、ライブでも十八番として数多く取り上げた。現代ではトニー・ベネット&レディー・ガガによるデュエット(2011『Duets II』)が話題となり、新世代に楽曲をブリッジした。レナ・ホーンほか多くのジャズ・ディーヴァ、さらにコンボやビッグバンドのインストゥルメンタルでも定番レパートリーとなっている。
現代における評価と影響
今日、『The Lady Is A Tramp』はセッションでの共通語であり、ヴォーカルの表現力とバンドのスウィング感を同時に試せる教材曲として評価が高い。歌詞の社会風刺は時代を超えて通用し、多様なジェンダー視点やキャラクター解釈にも開かれている。広告やドラマでの引用も見られ、文化的記憶としての強度を維持し続けている。
まとめ
ブロードウェイ発のショー・チューンが、洗練されたメロディと辛口のユーモアを武器にジャズ・スタンダードへ昇華した好例である。初学者はAABAの構造理解とリズムの押し引き、上級者は歌詞解釈とアレンジの妙に取り組むと、楽曲の懐の深さがいっそう味わえるだろう。