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Because
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

Because - 楽譜サンプル
Because|歌詞の意味と歴史
基本情報
ビートルズの「Because」は、アルバム『Abbey Road』(1969年)に収録された楽曲。作曲はレノン=マッカートニー名義で、歌詞付きのポップ曲。ドラム不使用の静謐なアレンジに、ジョン・ポール・ジョージの三声コーラスを三重録音して九声に重ねた豊麗なハーモニーが核を成す。ジョージ・マーティンの電気ハープシコード、ジョージ・ハリスンのモーグ・シンセサイザーが音色の彩りを与える。
歌詞のテーマと意味
言葉数は少なく、自然や宇宙の調和、愛の安らぎを静かに見つめる瞑想的な内容。断定的なメッセージよりも、感覚の余韻や“聴く間”を重視した書法で、語の響きと和声が一体となって恍惚感を生む。宗教色は強調されず、普遍的な驚きと受容の感情が中心に据えられている。具体的な物語性よりも、抽象的なイメージを通して聴き手の内省を促すのが特徴だ。
歴史的背景
制作背景として広く知られるのが、ベートーヴェン「月光」ソナタの和声進行を発想源にしたというエピソード。和声を反行させる発想から着想したと語られている。1969年、ロンドンのEMIスタジオで録音され、『Abbey Road』の中盤を象徴する静謐な小曲として完成。解散前夜のビートルズが到達した、合唱的サウンドの結晶と評価される。
有名な演奏・映画での使用
公式リリースでは『LOVE』(2006年)でアカペラ・ミックスが公開され、コーラスの精緻さが際立つ形で再評価を得た。映画では『アメリカン・ビューティー』(1999年)でエリオット・スミスによるカバーが使用され、『アクロス・ザ・ユニバース』(2007年)でも劇中歌として印象的に配されている。合唱団やアカペラ・グループによる編曲も多く、演奏会の定番にもなっている。
現代における評価と影響
重ね録りコーラスの透明感と精度は、ロックのみならず合唱・アカペラ界の参照点。スタジオを“楽器”として用いる発想を示す古典として研究対象になっている。モーグの用法はロックにおけるシンセ導入の早い例に数えられ、クラシック由来の和声感覚とポップの親密さを橋渡しする楽曲として、理論・録音技術双方の文脈でしばしば取り上げられる。
まとめ
「Because」は、派手さを抑えつつ“声”の美を極限まで研ぎ澄ました室内楽的ポップ。簡素な言葉と豊麗な和声で静かな高揚を生み、世代やジャンルを越えて聴き継がれている。ビートルズの後期を象徴する、制作美学と音楽的洗練が結晶した一曲だ。