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It's Only A Paper Moon

  • 作曲: ARLEN HAROLD
#スイング#スタンダードジャズ
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It's Only A Paper Moon - 楽譜サンプル

It's Only A Paper Moon|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「It's Only A Paper Moon」は、Harold Arlen(作曲)による1933年発表のポピュラー・ソングで、のちにジャズ・スタンダードとして定着した名曲。作詞はE.Y. HarburgとBilly Rose。英語詞を持つ歌ものだが、器楽での演奏機会も非常に多い。短い旋律動機と覚えやすいメロディが魅力で、初心者から上級者まで幅広い演奏者に支持され、ヴォーカル、コンボ、ビッグバンドなど編成を問わず取り上げられている。

音楽的特徴と演奏スタイル

一般にミディアム・スウィングのフィールで演奏されることが多く、32小節のAABA形式が基本。Aセクションは明快なトニック感と循環的なII–Vを軸に進み、B(ブリッジ)で調性感が緩やかに転じ、ドミナント・モーションが推進力を与える。メロディは跳躍と順次進行のバランスが良く、歌詞の語り口に合う自然なフレージングが特徴。アドリブではガイドトーン・ラインを意識しつつ、Aセクションのコード・サイクルを滑らかに接続するのがコツ。テンポは中速が標準だが、バラードやアップテンポに再構築される例も多い。

歴史的背景

1930年代前半のアメリカで発表され、当時のポピュラー・ソングの語法を受け継ぎながら、戦後のジャズ・レパートリーにも生き残った数少ない曲のひとつ。メロディの親しみやすさとアレンジ適性の高さが、スウィング期からビバップ、クール、モダン以降まで幅広いスタイルに受け継がれ、スタンダード化を後押しした。

有名な演奏・録音

名唱・名演は数多い。特にNat King Cole Trioのスウィンギーなアプローチは長く愛聴され、ヴォーカルではElla Fitzgeraldによる端正かつ解像度の高い解釈が定番として知られる。ほかにも多くのジャズ・シンガーやコンボがレパートリーとし、ギター・トリオやピアノ・トリオの器楽版も豊富。ビッグバンドではセクションを生かしたコール&レスポンスや、ブリッジでのブラスのリフ展開など、アレンジの妙を楽しめる。個別年次やアルバム情報は録音が膨大なためここでは割愛。

現代における評価と影響

今日でもジャム・セッションの常連曲で、スタンダード集に必ず収録される定番。歌詞のテーマ性と旋律の普遍性は教育現場にも向き、ヴォイシング練習やガイドトーン、リズム・フィールの教材として重宝される。音域や和声進行が過度に難解でないため、編曲の自由度が高く、スウィングから現代的ハーモニーまで柔軟に対応できる点が評価を高めている。

まとめ

「It's Only A Paper Moon」は、覚えやすいメロディと扱いやすいAABA構造により、ヴォーカル/インスト双方で生きる稀有な一曲。時代を超えて演奏され続ける理由は、歌詞の示す普遍的メッセージと、アレンジ自在の器の大きさにある。入門者の最初のスタンダードとしても、表現の幅を広げたい上級者の素材としても最適だ。