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Mother Nature's Son

  • 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES
#ビートルズ#洋楽ポップス
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Mother Nature's Son - 楽譜サンプル

Mother Nature's Son|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Mother Nature's Son」は、ビートルズのアルバム『The Beatles(通称:ホワイト・アルバム)』(1968)に収録。作曲・作詞クレジットはLennon–McCartneyだが、制作を主導したのはポール・マッカートニー。柔らかなアコースティック・ギターと小編成ブラスのオーバーダブで構成され、親密な歌声が際立つ。録音はロンドンのEMIスタジオで1968年8月に行われ、アレンジにはジョージ・マーティンが関与。ベーシックはマッカートニーの単独演奏に近い形で仕上げられている。

歌詞のテーマと意味

歌詞は自然の懐に抱かれた孤独と充足を描く。都会の喧噪や社会的役割から距離を置き、素朴な暮らしの中で生命の鼓動に耳を澄ます視点が通底する。自然を擬人化した“母なる自然”は慰撫と再生の象徴であり、観察者としてのまなざしが強い主張よりも静かな共感を生む。叙景に寄り添う旋律と軽いスウィング感が、静けさの中に宿るよろこびを浮き彫りにし、聴き手それぞれの“自然”への記憶を喚起する。

歴史的背景

発想源は1968年初頭、ビートルズがインド・リシケシュ滞在中に受けた講話から着想を得たことが知られている。ホワイト・アルバム期はメンバー間の緊張が高まっていたが、本曲はスタジオの喧噪から離れたかのような牧歌的ムードを保つ。マッカートニーのフィンガーピッキングを軸に、ブラスの色彩が控えめに寄り添う対比は、同作の多様性の中でも独自の居場所を獲得し、アルバムを内省へと引き締める役割を果たした。

有名な演奏・映画での使用

カバーは多数存在する。ジョン・デンバーは1969年のアルバム『Rhymes & Reasons』で取り上げ、フォーク/カントリー層へ浸透させた。ジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイスも1968年にビートルズ曲集『Mother Nature's Son』でインストゥルメンタル解釈を提示。映画では『アイ・アム・サム』(2001)のサウンドトラックでシェリル・クロウがカバーを提供している。その他の映像作品での使用は情報不明。

現代における評価と影響

本曲はマッカートニーのアコースティック・ワークの代表例として高評価を得る。装飾を排したソングライティング、自然音のように呼吸するダイナミクス、節度あるブラスの陰影は、のちのシンガー・ソングライターやフォーク・ポップに影響を与えたと評される。環境意識の高まりの文脈で語られることもあるが、説教的でない開放的な語り口が普遍性を支え、今日もプレイリストで存在感を保ち続けている。

まとめ

「Mother Nature's Son」は、ホワイト・アルバムの雑多な景観の中で静謐を体現する楽曲だ。シンプルな編成、含みのある言葉、品の良いブラスの彩りが時代を超えて新鮮さを保ち、自然との距離をそっと測り直すきっかけを与えてくれる。アコースティック・ビートルズの魅力を凝縮した、聴き返すほど味わいが増す一曲である。