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アーティスト情報なし

Mother

  • 作曲: LENNON JOHN WINSTON
#ビートルズ#洋楽ポップス
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Mother - 楽譜サンプル

Mother|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Mother」はジョン・レノンが1970年に発表したアルバム『John Lennon/Plastic Ono Band』収録曲。作曲・作詞はLENNON JOHN WINSTON。プロデュースはジョン・レノン、ヨーコ・オノ、フィル・スペクター。編成はピアノ、ベース、ドラムを中心とする極めてミニマルなバンド・サウンドで、ドラムはリンゴ・スター、ベースはクラウス・フォアマンが参加した録音として知られる。重厚なエコーを避けた乾いた音像と遅めのテンポが、個人的な独白性を際立たせるのが特色である。

歌詞のテーマと意味

本曲の核心は、母の死と父の不在という私的体験に根差した喪失、怒り、孤独、そして自己受容へ向かうプロセスにある。レノンは母親と父親へ向けた呼びかけを反復し、未解決の感情をあらわにしながら、やがて関係の終焉と自立の決意へと収束していく。過度な比喩を用いず、直接的な言い回しと長いフレーズの伸ばし、叫びに近い発声が、言葉の意味を肉体的な実感へ変換。祈りにも似たモチーフの反復は、個人の痛みを普遍的な体験として共有可能にしている。

歴史的背景

発表はビートルズ解散の余波が続く1970年。レノンは当時、アーサー・ジャノフのプライマル・スクリーム療法を受けており、その影響が歌唱と構成に色濃く反映された。子ども時代に母を交通事故で失い、父と離れて育った履歴が作品の根幹にある。制作面ではフィル・スペクター関与ながら、「ウォール・オブ・サウンド」とは対照的な引き算の美学が採用され、声とピアノの生々しさを最優先。アルバム全体のドキュメンタリー的な質感の中でも、最も痛切な告白曲と位置づけられる。

有名な演奏・映画での使用

代表的な演奏として、1972年ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン公演(後年『Live in New York City』として作品化)が挙げられる。スタジオ版に比べ、より荒々しいボーカルとダイナミクスの起伏が強調され、曲の本質である告白性と緊張感が増幅された。カバーや映像作品での使用事例は複数存在するが、網羅的な公式一覧は情報不明。映画での顕著な使用に関しても情報不明。近年はリミックス/リマスターやアウトテイクの公開により、制作過程の理解が進んでいる。

現代における評価と影響

「Mother」は、ポップ・ミュージックにおける自己告白の極致として高く評価されてきた。派手な編曲を排し、感情の核だけを提示することで、シンガーソングライターの表現に新たな基準を提示。オルタナティブやインディのアーティストにも、声の生々しさを軸とする制作哲学を喚起した。トラウマや家族、喪失を主題とする楽曲の参照点として引用され続け、再発・資料公開によってアーカイヴ的価値も上昇。今日でもライブやメディアでの言及が絶えない。

まとめ

「Mother」は、個人的体験を普遍的感情へ橋渡しするジョン・レノンの代表曲である。最小限の伴奏、直接的な言葉、肉体的な歌唱が三位一体となり、聴き手に深い共鳴をもたらす。1970年という転換点に生まれた本作は、時代を超えて自己告白のあり方を更新し続ける。映画での使用情報は情報不明ながら、音楽史的地位と影響力は揺るがない。破壊と再生の境界に立つ一編として、今なお鮮烈に響く。