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Oh! Darling
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

Oh! Darling - 楽譜サンプル
Oh! Darling|歌詞の意味と歴史
基本情報
ビートルズの「Oh! Darling」は、アルバム『Abbey Road』(1969)収録のバラード。作曲・作詞はレノン=マッカートニー名義で、リード・ボーカルはポール・マッカートニー。ロンドンのEMI(アビイ・ロード)・スタジオで録音され、レーベルはApple。50年代R&Bやドゥーワップの影響を色濃く示す楽曲として知られる。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、愛する相手に許しと信頼を懇願する告白劇。タイトルの呼びかけが象徴するように、傷つけてしまった過去への悔恨と、二度と同じ過ちを繰り返さないという誓いが反復される。甘美なコーラスと切迫したシャウトのコントラストが、依存と献身の揺れを際立たせる。直截な言葉運びと古典的なラブソングの語彙を用いながら、感情の高まりを段階的に押し上げる構成が特徴だ。
歴史的背景
制作はバンドの緊張が高まった1969年の『Abbey Road』セッション期。マッカートニーは“古いR&B歌手”の質感を求め、何日にもわたりボーカルを録り直したとされる。荒々しく枯れたテイクはその試行の成果で、ジョン・レノンは後年「自分が歌うべき曲だった」と語っている。プロデューサーのジョージ・マーティンの下、洗練されたサウンド設計と回帰的なルーツ志向が同居する文脈で誕生した。
有名な演奏・映画での使用
ビートルズとしての公式ライブ演奏は存在しない(彼らは1966年にツアー活動を停止)。一方、数多くのカバーが制作され、映画『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)では劇中カバーが印象的に使用された。以後も映像作品やステージで再解釈が続き、50年代R&B風の歌唱法を現代的に更新する試みの好例として取り上げられることが多い。
現代における評価と影響
本曲は『Abbey Road』のハイライトに数えられ、マッカートニーのソウルフルな歌唱を示す代表例としてしばしば言及される。50年代ルーツへの敬意とロックのダイナミズムを統合した書法は、後続のポップ/ロック歌手に“叫ぶバラード”という表現軸を提示した。録音アプローチや声の質感作りは、スタジオでの歌唱演出の手本として今日も参照されている。
まとめ
「Oh! Darling」は、懇願の物語を濃密な歌唱で描くビートルズ流R&Bバラード。録音美学とボーカル表現が結晶した一曲として、今なお強い求心力を放ち続けている。アルバム文脈でも単曲としても、時代を超えて聴き手の感情に直結する普遍性を備えている。