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Old Devil Moon
- 作曲: LANE BURTON

Old Devil Moon - 楽譜サンプル
Old Devil Moon|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Old Devil Moonは、1947年初演のブロードウェイ・ミュージカル『フィニアンの虹』の挿入歌として誕生したナンバー。作曲はBurton Lane(入力表記:LANE BURTON)、作詞はE.Y. Harburg。舞台発のポピュラー曲ながら、その後の録音を通じてジャズ・スタンダードとして定着した。原題はOld Devil Moon、日本では「オールド・デヴィル・ムーン」の表記が一般的。初演キャストの詳細や初出時の調性・テンポは情報不明だが、今日ではヴォーカル/インストの双方で広く演奏される楽曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽妙なスウィング感と洒脱なメロディが最大の魅力。跳躍と順次進行が交錯する旋律線は、甘いロマンティシズムと気だるいニュアンスを同時に帯び、歌唱ではレガートと細やかなシンコペーションのコントラストが映える。ハーモニー面では、ツー・ファイヴ進行や副次ドミナントを活用したモダンな設計が特徴で、ソロではガイドトーンを軸にクロマチックなアプローチが効果的。テンポは中速スウィングが標準だが、ボサ・ノヴァ風の解釈やバラードでの再構成も行われる。伴奏は4ビート・ウォーキングを土台に、ブリッジでのダイナミクスの起伏をつけると、物語性が強調されやすい。
歴史的背景
第二次世界大戦後のブロードウェイは、社会風刺とロマンティックな楽曲が共存する時代で、『フィニアンの虹』もその流れに位置づけられる。LaneとHarburgは同作で複数の名曲を生み出し、そのうちの一曲であるOld Devil Moonは、舞台の文脈を離れても成立する普遍性を持った。後年の映画版『フィニアンの虹』でも主要ナンバーとして取り上げられ、舞台からスクリーンへと受容の場を広げたことが、スタンダード化を後押しした。
有名な演奏・録音
この曲は多くの歌手とジャズ・ミュージシャンに録音されてきた。なかでもテナー・サックスのソニー・ロリンズによるライブ演奏は、力強いスウィングと自在なモチーフ展開で楽曲のジャズ的本質を際立たせ、代表的な解釈として知られる。ヴォーカルでは、舞台/映画の文脈を踏まえたドラマティックな表現から、軽快でスキャットを交えるアプローチまで幅が広い。編成もピアノ・トリオからビッグバンドまで柔軟に対応でき、録音史の豊かさがレパートリーとしての強度を物語っている。具体的なアルバムや年次は情報不明。
現代における評価と影響
Old Devil Moonは、ジャズ教育の現場やジャム・セッションで頻繁に扱われる定番曲となっている。メロディの覚えやすさとハーモニーの奥行きが両立しており、歌手にとっては表情付けの自由度が高く、器楽奏者にとってはアドリブの設計を学ぶ好例となる。舞台起源の楽曲ながら、現代的なアレンジとも親和性が高く、ラテン、ワルツ、ミニマルなデュオ編成など多様な解釈が可能である点も、継続的な人気の理由といえる。
まとめ
『フィニアンの虹』発のOld Devil Moonは、物語性とジャズ即興の相性が良い稀有な楽曲で、時代を越えてレパートリーとして生き続けている。舞台の華やぎを残しつつも、和声的な洗練が演奏者の創意を引き出す。初学者から上級者、ヴォーカルからインストまで幅広く取り組めるスタンダードである。