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What's New
- 作曲: HAGGART ROBERT

What's New - 楽譜サンプル
What's New|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「What's New」は、ベーシスト/作曲家ボブ・ハガートが作曲し、1939年にジョニー・バークが歌詞を付けて発表されたバラード。スウィング期に生まれ、現在はジャズ・スタンダードとして広く定着している。形式は32小節のAABA型で、歌入り・器楽いずれの形でも演奏されることが多い。感傷をたたえた都会的なムードが特徴で、コンサートからクラブ、レコーディングまで幅広い現場で選曲される。
音楽的特徴と演奏スタイル
しなやかな旋律が高音域から静かに下降し、内省的な情感を醸す。テンポはゆったりしたバラードが一般的で、イントロにルバートを配したり、終盤でダイナミクスを抑えて余韻を残す解釈が親しまれている。ハーモニーは要所にII-V進行を配し、柔らかな解決感をもたらすため、アドリブではガイドトーンやモチーフ展開が有効。ボーカルは言葉の間合いを大切にしたフレージングが鍵となり、テナーサックスやトランペットの歌心あるバラード・ナンバーとしても定番である。
歴史的背景
本作はもともと、ハガートがボブ・クロスビー楽団のために書いたインストゥルメンタル曲「I'm Free」を原型とし、その後ジョニー・バークが歌詞を付与して「What's New」として発表された。旧恋人との再会を静かに見つめるような語り口は、1930年代末のポピュラー・ソングの中でも洗練を極め、多くのバンドや歌手のレパートリーに加えられて広まった。発表当時から今日に至るまで、時代を超えて解釈を生み続ける基盤がここにある。
有名な演奏・録音
代表的な名唱として、フランク・シナトラが1958年のアルバム「Frank Sinatra Sings for Only the Lonely」で取り上げ、ネルソン・リドルの編曲とともに陰影豊かな世界を築いた。モダン・ジャズでは、ジョン・コルトレーンが1962年の「Ballads」で端正かつ抑制の美を示し、スタンダード解釈の規範となっている。さらに、リンダ・ロンシュタットは1983年のアルバム「What's New」で大々的に紹介し、世代を超えた再評価を後押しした。
現代における評価と影響
いまもセッションのバラード定番として愛奏され、初学者の教材からプロのコンサートまで幅広く選ばれる。AABAの明快な設計、歌心を引き出す音域とフレーズ、アレンジの自由度の高さが評価され、スタンダード曲集や教育現場でも継続的に扱われる。メディア使用の網羅的な記録は情報不明だが、録音・配信の両面で新録が絶えず、解釈の多様性が作品の寿命を支えている。
まとめ
「What's New」は、ハガートの洗練された旋律にバークの繊細な言葉が寄り添う、時代を超えるバラードである。歌でも器楽でも魅力を放ち、シンプルさの中に深い表現の余地を残すことで、今なお新たな名演を生み続けている。