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Mood Indigo
- 作曲: BIGARD ALBANY

Mood Indigo - 楽譜サンプル
Mood Indigo|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Mood Indigoは、デューク・エリントンとクラリネット奏者Albany “Barney” Bigardの共作として1930年に発表されたジャズ・スタンダード。のちにアーヴィング・ミルズの歌詞が付けられ、器楽曲・歌ものの双方で広く演奏されている。エリントン楽団の代表曲の一つで、哀愁と官能をたたえたバラードとして知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
最大の特徴は、クラリネットを最低音に置き、ミュートを付けたトランペットとトロンボーンを上に重ねる“逆転ボイシング”。この配合がくすんだ色彩と深い陰影を生み、タイトルの“インディゴ”のムードを音で描く。テンポはゆったりとしたバラードが基本。プランジャー・ミュートの語り口、落ち着いた2ビートのベース、ピアノの空間を生かした伴奏が好まれる。ヴォーカル版ではブレスとレガートの対比が聴きどころ。
歴史的背景
初期稿はラジオ放送向けに“Dreamy Blues”として書かれ、同年中に“Mood Indigo”へと定着。ニューヨークのコットン・クラブ時代にエリントンが確立した色彩的編曲の代表例で、当時のダンス・バンドの文法を拡張した。ミルズによる歌詞付与により、ダンスホールからリビングルームまで浸透し、アメリカ大衆音楽の標準曲として地位を得た。
有名な演奏・録音
出発点はDuke Ellington and His Orchestraの1930年録音。以後もエリントンは折に触れて再録し、編曲面の進化を示した。ヴォーカルではElla Fitzgeraldが『Sings the Duke Ellington Song Book』で端正に歌い上げ、Nina Simoneは『Little Girl Blue』で内省的な解釈を提示。ピアノ・トリオではOscar Petersonのエリントン集が、滑らかなタッチと洗練されたヴォイシングで名演として知られる。
現代における評価と影響
本曲はジャズ教育の定番レパートリーであり、ビッグバンドから小編成、ヴォーカルまで幅広く取り上げられる。作編曲家にとっては、異色のホーン配列とダイナミクス設計を学ぶ格好の教材で、演奏家にとっては音色・アタック・間合いのコントロールが問われる課題曲でもある。録音・配信時代になってもプレイリストの常連で、夜想的ジャズの代名詞として定着している。
まとめ
“Mood Indigo”は、シンプルな素材と革新的なオーケストレーションの融合により、時代を超えて演奏され続ける名曲である。Bigardのクラリネット的発想とエリントンの色彩感覚が生んだ独自の音世界は、今日も多くのジャズ・ミュージシャンに創造のヒントを与え続けている。