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Quizas, Quizas, Quizas

  • 作曲: FARRES OSVALDO
#洋楽ポップス#ラテン
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Quizas, Quizas, Quizas - 楽譜サンプル

Quizas, Quizas, Quizas|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Quizas, Quizas, Quizas」はキューバの作曲家オスバルド・ファーレス(Osvaldo Farrés)が1947年に発表したボレロの名曲。タイトルの“Quizás”はスペイン語で「たぶん/おそらく」を意味し、英語版は「Perhaps, Perhaps, Perhaps」として広く知られる。英語詞はJoe Davisによる翻案で、原曲の切ない逡巡のムードを保ちながら国際的ヒットとなった。ラテン音楽とジャズの両文脈で歌い継がれ、今日ではスタンダードとして認知されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

中庸からスローの4/4で、ボレロ特有のしっとりしたグルーヴが核。ハバネラ由来のシンコペーションを柔らかく用い、ギターやピアノ、ブラシのドラム、穏やかなベースが定番編成。旋律は問いかけるようなフレーズの反復と間合いが魅力で、歌手はレガートと溜め(ルバート)で心理の揺れを描く。ジャズ寄りの解釈では副次ドミナントやトライトーン・サブなどのリハーモナイズが行われ、ボレロ・フィールを保ちつつもハーモニックに発展可能。ダンス文脈ではルンバ(ボレロ)としても親しまれる。

歴史的背景

1940年代後半、キューバやメキシコを中心にボレロはラテン圏で黄金期を迎え、ラジオとレコード市場の拡大を追い風に各地へ拡散した。ファーレスは「Tres Palabras」などでも知られるヒットメーカーで、本作は日常の曖昧な返答をモチーフにした語り口と覚えやすい旋律で一躍スタンダード化。英語版の登場は北米・欧州市場への橋渡しとなり、ラテン音楽と英語圏ポピュラーの交流を象徴する存在となった。

有名な演奏・録音

代表的な録音として、スペイン語で歌ったNat King Coleのバージョン、英語版のDoris Dayによる「Perhaps, Perhaps, Perhaps」が広く知られる。ほかにもラテン大衆音楽やジャズの名歌手・名楽団が数多く取り上げ、編成はトリオのギター伴奏からフル・オーケストラまで多彩。各演奏はテンポ、キー、ハーモニー処理に違いがあり、シンプルな曲型ながら解釈の幅広さが再演性を高めている。

現代における評価と影響

本曲は映画やドラマでの使用でも定評があり、ウォン・カーウァイ監督の「花様年華(In the Mood for Love)」などで印象的に響く。スタンダードとしてジャズ・ボーカルのレパートリーに定着し、音大やワークショップでもボレロ表現を学ぶ教材として採用されることが多い。社交ダンスのレパートリーでも人気が高く、世代や言語を超えて親しまれ続ける稀有な楽曲である。

まとめ

「Quizas, Quizas, Quizas」は、簡潔なモチーフと躍動を抑えたボレロの律動が、恋の逡巡という普遍的テーマを的確に支える名作。英語版を含む数々のカバーと映像作品での再文脈化により、誕生から長い歳月を経てもなお新鮮な魅力を放ち続ける。ラテンとジャズの交差点に立つスタンダードとして、今後も演奏家と聴き手の想像力を刺激し続けるだろう。