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Solamente Una Ves
- 作曲: AGUSTIN LARA

Solamente Una Ves - 楽譜サンプル
Solamente Una Ves |歌詞の意味と歴史
基本情報
「Solamente Una Ves」は、メキシコの巨匠アグスティン・ララが作曲したボレロ。発表年は1941年とされ、原詞もララが手がけた作品です。後に英語詞(題名は「You Belong to My Heart」)が付けられ、国際的に広く知られるようになりました。スペイン語題名は「ただ一度だけ」の意。穏やかなテンポと流麗な旋律、ロマンティックな和声進行が特長で、ラテン圏のスタンダードとして現在も演奏機会が多い名曲です。
歌詞のテーマと意味
歌詞の核は「人生でただ一度だけ本当の愛に出会う」という普遍的な命題。運命的な出会いがもたらす恍惚と畏れ、記憶に刻まれる光のような比喩を通して、愛の唯一性と永続性への願いが率直に表現されます。明確な物語性よりも情感の連なりに重点が置かれ、フレーズの反復が心情の高まりを支えます。過度な劇性を避けた言葉遣いが、聴き手それぞれの体験に重なる余白を生み、世代や地域を超えて共感を呼び続けています。
歴史的背景
1940年代初頭、メキシコやキューバを中心にボレロは黄金期を迎え、都市のサロンから映画まで幅広く浸透しました。ララはその中心的作曲家の一人で、美しい旋律と洗練された和声感でジャンルの国際化に寄与します。本作はその代表例として、スペイン語圏外でも親しまれる橋渡しとなりました。アメリカ合衆国とラテンアメリカの文化交流が活発化した時期とも重なり、楽曲は国境を越えるロマンティック・スタンダードとして定着していきます。
有名な演奏・映画での使用
英語版「You Belong to My Heart」は、ディズニー映画『三人の騎士』(1944年)で使用され、Ray Gilbertによる英語詞が付与されて世界的な知名度を獲得しました。以降、多数の歌手・楽団がスペイン語版/英語版の双方を録音し、編成もギター伴奏の親密なスタイルからオーケストラを伴う壮麗なアレンジまで多様です。具体的な代表録音は情報不明ですが、映画を起点にポピュラー音楽のレパートリーへ確固たる位置を築きました。
現代における評価と影響
現在もボレロやラテン・スタンダードの重要曲として、コンサート、ジャズ/ラテンのクロスオーバー企画、結婚式など親密な場でも取り上げられます。スペイン語の美しい韻律は、英語版とは異なる味わいを残し、歌手の表現力を際立たせます。配信時代においても新録やライブ映像が継続的に公開されることで次世代へ継承が進み、教育現場や音楽史の文脈でもララ作品の入口として紹介されることが多い楽曲です。
まとめ
「Solamente Una Ves」は、ボレロの精髄である甘美な旋律と普遍的な愛のテーマを兼ね備え、映画での英語版普及を通じて世界標準のラブソングとなりました。作曲者アグスティン・ララの美学が凝縮された一曲であり、言語や編成を越えて歌い継がれる理由は、その簡潔さの中に宿る情感の深さにあります。初めて聴く人にも、名演の聴き比べにも耐える、時代を超えた名曲と言えるでしょう。