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Perfidia

  • 作曲: DOMINGUEZ ALBERTO, DOMINGUEZ BORRAS ALBERTO
#ラテン
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Perfidia - 楽譜サンプル

Perfidia |楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Perfidia」は、メキシコの作曲家アルベルト・ドミンゲス(Alberto Domínguez)によるボレロ。発表年は1939年とされ、原詞はスペイン語で歌われることが多い一方、後年には英語詞も付けられ、国境と言語を越えて広く普及した。タイトルの“Perfidia”は「裏切り」を意味し、失恋と不信、未練を軸とする内容が核である。ラテン音楽の名曲として定着し、ジャズ・スタンダードの文脈でも頻繁に取り上げられるため、歌物・インストゥルメンタルの双方で豊富な録音が存在する。

音楽的特徴と演奏スタイル

穏やかな中低速テンポと、ハバネラ由来のシンコペーションを内包したボレロのリズムが骨格。甘美で流麗な旋律線は、半音階的な装飾やレガートの歌唱で映える。和声はツー・ファイブ進行やセカンダリードミナントを要所に配し、平行調間の行き来が情感の陰影を深める。ジャズ解釈ではスウィング化、ラテン・ジャズ編成、ボサノヴァ的ビートへの置換など多彩なアレンジが可能。イントロで自由なルバート、間奏でギターやピアノのソロ、終盤のリタルダンドといった構成的工夫も定番である。

歴史的背景

1930年代後半はメキシコやキューバ圏を中心にボレロが国際的な広がりを見せた時期で、本曲もその潮流のなかで誕生した。40年代以降、米国のダンス・バンドやラジオ放送を通じて人気が拡大し、ラテン音楽とアメリカン・ポピュラー/ジャズの交流を象徴するレパートリーとなる。普遍的な失恋のテーマは文化圏を超えて共感を呼び、歌唱曲としてだけでなく、器楽曲としても愛奏されるようになった。

有名な演奏・録音

Xavier Cugat楽団は早期から本曲を取り上げ、ラテン・ダンスの定番として米国での普及に寄与。Trio Los Panchosは甘美なハーモニーでボレロの魅力を広く伝えた。Nat King Coleはスペイン語アルバムで録音し、英語圏リスナーにもスペイン語版の豊かなニュアンスを紹介している。さらにThe Venturesによる1960年代のインストゥルメンタル版は、サーフ・ロックの文脈で世界的な知名度を獲得し、曲の新たな側面を提示した。以降、ジャズ、ラテン、ポップ各界で多くの録音が続く。

現代における評価と影響

「Perfidia」は、ラテン/ジャズ双方の現場で基礎曲として扱われ、教育やセッションでも通用度が高い。社交ダンスのレパートリー、カフェやホテル・ラウンジの選曲、コンサートの抒情的な小品としても定着。映像作品や舞台音楽で引用される機会も多く、ノスタルジーや甘くほろ苦い空気感を演出する定番楽曲として生き続けている。多言語・多ジャンルへの適応力の高さが、長期的な支持の背景にある。

まとめ

ボレロとして生まれ、ジャズ・スタンダードへと拡張した「Perfidia」は、普遍的な失恋のテーマと柔軟な音楽構造によって世代と地域を超えて愛奏されてきた。歌唱でも器楽でも魅力が映え、アレンジの自由度が高い点も長寿の要因である。入門者にとっては表現力と基礎的和声を学べる教材であり、熟練者にとっては解釈の幅を示すキャンバスとなる、時代を超えた名曲である。