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Peanut Vendor,The (南京豆売り)
- 作曲: SIMON RODRIGUEZ MOISES

Peanut Vendor,The (南京豆売り) - 楽譜サンプル
Peanut Vendor,The (南京豆売り)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Peanut Vendor,The(日本語題:南京豆売り)は、スペイン語原題「El Manisero」に相当するキューバの歌曲です。作曲者はSIMON RODRIGUEZ MOISES。歌詞は街頭行商の呼び声(プレゴン)を題材にし、呼び込みのフレーズを旋律化した点が特色となっています。初出年や初演情報は情報不明。英語圏では“The Peanut Vendor”として広まり、日本でも「南京豆売り」の名で知られます。ジャズのレパートリーとしても定着しており、歌付き・器楽アレンジの双方で演奏される代表的なラテン・ナンバーです。
音楽的特徴と演奏スタイル
基盤にはアフロ・キューバンのクラーベ感と強いシンコペーションがあり、コール&レスポンスやモントゥーノ的反復が印象を決定づけます。旋律は商いの呼び声に由来するため、語り口調のニュアンスを活かした歌唱が合います。リズム・セクションはボンゴ、クラベス、マラカス、ベース、ピアノなどが中核となり、ホーンセクションは短いリフや対旋律で推進力を補強。テンポは中速〜やや速めで演奏されることが多く、ダンス音楽としての躍動と、ジャズ的アドリブの両立がポイントです。ビッグバンドから小編成まで幅広い編成に適応し、編曲の自由度が高いことも普及の理由と言えます。
歴史的背景
本曲はキューバで生まれ、1930年代初頭にアメリカへと広がったラテン音楽ブームと深く結びついています。特にDon Azpiazú and his Havana Casino Orchestraによる1930年の録音は、アメリカ市場にアフロ・キューバンのサウンドを知らしめる上で重要な役割を果たしました。その後、ダンス・ホールや放送で取り上げられ、ジャズ・シーンにも波及。アメリカのバンドがラテン要素を取り入れる契機のひとつとなり、跨文化的な音楽交流の象徴的存在として位置づけられます。
有名な演奏・録音
歴史的に重要なのは、前述のDon Azpiazú(1930年)の録音です。続いてLouis Armstrong(1931年)による演奏は、ジャズの文脈で本曲の知名度をさらに押し上げました。ビッグバンド界ではStan Kenton(1947年)が大胆なアレンジで取り上げ、ラテンとモダンなブラスサウンドの融合例として知られます。さらに、1950年代以降はペレス・プラードなどのラテン楽団もレパートリーに加え、多数の歌手・器楽奏者がバージョンを残しています。現在も配信や復刻盤で多様な録音を聴くことができます。
現代における評価と影響
南京豆売りは、ラテン・ジャズ/アフロ・キューバン系レパートリーの定番曲として、世界各地のステージで継続的に演奏されています。プレゴン由来の旋律美とクラーベに根差したリズムは、スタイルの違いを超えて取り入れられ、ジャズ・アレンジでも原曲の魅力を損なわずに展開可能です。教育現場やアンサンブルでもプログラムに載る機会が多く、時代や編成を問わず引用・再解釈される強い生命力を持つ作品として評価されています。
まとめ
Peanut Vendor,The(南京豆売り)は、プレゴンの風合いとアフロ・キューバンの律動を核に、ジャズとラテンの橋渡しを果たした記念碑的楽曲です。初出年は情報不明ながら、名演の積み重ねを通じてスタンダードとして定着。今なお多彩なアレンジで演奏され、その普遍的な魅力を示し続けています。