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Black Nile

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#スタンダードジャズ
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Black Nile - 楽譜サンプル

Black Nile|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Black Nileはウェイン・ショーター作曲のジャズ曲。1964年録音のBlue Note作品『Night Dreamer』で初出となり、以後スタンダードとして広く演奏されてきた。編成はテナーサックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット。歌詞は存在せず完全な器楽曲である。曲名の由来や歌詞の有無以外の物語的背景は情報不明。具体的な調性・拍子・正式なフォーム表記は版や解釈によって差があり、固定的な規定情報は情報不明とする。

音楽的特徴と演奏スタイル

ショーターらしい凝縮されたモチーフの反復と展開、そして機能和声とモーダル感覚が交錯する曖昧で豊かなハーモニーが特徴。テーマは端整で印象的だが、アドリブでは動機を微細に変容させながら物語性を築くアプローチが有効とされる。初出録音ではトランペットとテナーの二管フロントが緊密にユニゾンとハーモニーを行き来し、ピアノは開放的なヴォイシングで空間を支える。リズムはスウィングの推進力と多層的なシンコペーションが絡み、ソリストの自由度を高める設計となっている。

歴史的背景

本作が収録された『Night Dreamer』は1964年、ニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで録音。ショーターは直前までアート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズで頭角を現し、本作の時期にリーダー作を精力的に発表、同年後半にはマイルス・デイヴィス第2期クインテットへ加わる転換期にあった。ハードバップの骨格を保ちながら、より抽象度の高い作曲意識へ踏み出す過程を象徴するレパートリーとして本曲は位置づけられる。

有名な演奏・録音

決定的な基準は初出のBlue Note盤『Night Dreamer』。メンバーはウェイン・ショーター(ts)、リー・モーガン(tp)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。ショーターのリーダー録音として、曲の構造とインタープレイの方向性を明確に示した重要音源である。その他の代表的録音・映像作品については情報不明。

現代における評価と影響

Black Nileはショーター作品群の中でも演奏者の解釈余地が広く、現代ジャズの語法を学ぶ題材としても取り上げられる。モチーフ主導の即興、テンションを選び抜いた和声運用、二管アンサンブルの精妙なバランスなど、後続世代の作編曲とインプロヴィゼーションに影響を与え続けている。クラブ・シーンから音大のアンサンブルまで、場面に応じたテンポ設定やフォーム運用が行われ、柔軟に現在化されている点も評価の理由である。

まとめ

Black Nileは、ショーターの作曲的美学—簡潔な動機と開かれた和声—を凝縮した名曲。初出録音が鑑賞・研究の出発点であり、各奏者の解釈が映える余白がスタンダード化を後押しした。曲名の由来など一部は情報不明だが、歴史的意義と演奏実践の広がりは明白で、今なお新鮮な刺激を放つレパートリーである。