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Change Partners

  • 作曲: BERLIN IRVING
#スタンダードジャズ
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Change Partners - 楽譜サンプル

Change Partners|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Change Partners は、作曲家アーヴィング・バーリンが映画『Carefree』(1938年)のために書いた楽曲。映画ではフレッド・アステアにより披露され、公開当時から広く親しまれてきた。旋律と歌詞を同じくバーリンが手がけており、アメリカン・ソングブックを代表するレパートリーの一つとして、現在ではジャズ・スタンダードに数えられる。ダンス・ホールの情景を背景に、パートナーを替えて踊るという社交場の作法をモチーフに、人間関係の機微や移ろう感情を端正な言葉運びで描くのが特徴で、歌詞の全文引用は避けるが、そのイメージ喚起力は多くの歌手・奏者を惹きつけてきた。

音楽的特徴と演奏スタイル

形式はスタンダードでおなじみの32小節AABA。流麗な主題と滑らかなブリッジが明快に対比し、声楽的なフレージングを生かしやすい。和声はセカンダリー・ドミナントや循環的な進行を基調に、過度な転調に頼らずクラシカルな均整を保つ。テンポ設定は幅広く、スウィングの中庸からバラードまで適応するほか、後年はボサノヴァ風の解釈でも定着した。歌唱ではレガート主体の息の扱いと子音の明瞭さが肝要で、器楽演奏では旋律線の間合いとダイナミクスのコントロールが表現の鍵となる。

歴史的背景

1930年代後半、ハリウッドのミュージカル映画は黄金期にあり、バーリンはブロードウェイ/映画の双方で名曲を量産していた。『Carefree』での初演以後、本曲はたちまち人気曲となり、ダンスと歌が有機的に結びつくバーリン流のソングライティングの成熟を示す例として評価される。楽曲自体は映画の文脈に根差しながらも、ダンスの所作を普遍的な人間ドラマへ昇華しており、舞台やクラブで独立したナンバーとして演奏される素地を早くから備えていた。映画音楽由来のポピュラー・ソングがジャズの定番へ移行していく過程を象徴する一曲と言える。

有名な演奏・録音

初演のフレッド・アステアによる歌唱と映画でのパフォーマンスは、楽曲の洗練とエレガンスを決定づけた代表例である。加えて、フランク・シナトラがアントニオ・カルロス・ジョビンとの共演で残したボサノヴァ寄りの録音(1967年)は、リズムの衣替えによって曲の新たな顔を引き出した名演として知られる。以後、多数のジャズ・シンガー、ピアニスト、ビッグバンドがレパートリーに取り入れ、バラードからミッド・テンポ、ラテン風味まで解釈の幅が広がった。映画『Carefree』での使用は現在も本曲の代表的な参照点である。

現代における評価と影響

Change Partners は、アメリカン・ソングブックのスタンダードとして、教育現場の教材やセッションの常用曲に位置づけられている。過度に技巧を誇示せずとも、フレーズ運びと語り口の巧拙がそのまま表現力に反映されるため、歌手・奏者双方にとって腕の見せどころが多い。ボーカル・ジャズのみならず、室内楽的な小編成やクロスオーバーの文脈でも取り上げられ、時代やジャンルを超えてプログラムに組み込みやすい柔軟性を持つ。その普遍性が、公開から長い年月を経てもなお演奏頻度を支えている。

まとめ

映画発のポピュラー・ソングとして生まれ、ジャズ・スタンダードへと定着した Change Partners は、端正なメロディと洗練された言葉運び、幅広い解釈を許す構造によって息長く愛されている。アーヴィング・バーリンの職人的手腕を示す一方で、現代の演奏家にも新たなアプローチの余地を開く稀有な一曲である。映画史・ジャズ史・歌の表現という三つの軸が交差する地点に立つ名曲として、今後も再発見が続くに違いない。