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Goin'Home
- 作曲: DVORAK ANTONIN

Goin'Home - 楽譜サンプル
Goin' Home|作品の特徴と歴史
基本情報
Goin' Home(家路)は、ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番「新世界より」第2楽章Largoの主題に、弟子ウィリアム・アームズ・フィッシャーが1922年に英語歌詞を付けて成立した歌曲。原曲の交響曲は1893年、作曲者のアメリカ滞在期に書かれた。しばしばアフリカ系アメリカ人のスピリチュアルと誤認されるが、旋律自体はドヴォルザークの創作であり、後年に歌として普及した経緯を踏まえることが重要である。
音楽的特徴と表現
Largoの冒頭主題はイングリッシュ・ホルンの温かな音色で提示され、ゆったりした拍節と広いアーチを描く旋律線が郷愁と安息のイメージを喚起する。和声は素朴で、内声の穏やかな動きが主題を支え、歌詞を付しても自然に言葉が乗る設計となっている。歌曲としては独唱・合唱・器楽伴奏など多彩に編曲され、静謐な祈りから劇的なクライマックスまで、解釈の幅広さがレパートリーとしての寿命を支えている。
歴史的背景
ドヴォルザークは国民楽派の旗手として、アメリカ滞在中に黒人霊歌やネイティヴ・アメリカンの音楽に強い関心を持ち、そこから受けた印象を自作に昇華したと述べている。ただし「Goin' Home」の具体的な旋律は彼自身のオリジナルである。フィッシャー(1861–1948)は教育者・編集者として活動し、この主題に“帰郷”の情感を重ねて歌詞を付与、楽譜として普及させたことで、交響曲から派生した歌曲が独自の生命を得る契機となった。
使用された映画・舞台(該当時)
本楽曲または同主題の具体的な映画・舞台での使用例は情報不明。ただし、葬送・追悼の場や卒業・記念式典など、厳粛さと慰撫を求められる場面で演奏されることが多く、テレビやラジオのBGMとして用いられる事例も見られる。合唱・吹奏楽・弦楽合奏など教育・アマチュアの領域でも定番曲として浸透している。
現代における評価と影響
普遍的な“帰る場所”のイメージを喚起する旋律は、クラシックの名旋律として広く認知され、原曲の名声と並行して歌としても親しまれる。プロの声楽家から児童合唱、器楽独奏に至るまで多様な演奏形態が存在し、録音・配信のカタログも豊富である。スピリチュアルとの関係をめぐる認識の混同は今なお見られるが、その検討は異文化の受容と創作の関係を考える上で示唆的である。
まとめ
「Goin' Home」は、交響曲第9番のLargo主題から生まれた派生歌曲であり、慰めと帰郷の象徴として愛奏され続けている。成立の経緯と音楽的特質を知ることで、旋律に宿る歴史と表現の厚みが一層鮮明になるだろう。