I Ain't Got Nothing But The Blues
- 作曲: ELLINGTON DUKE

I Ain't Got Nothing But The Blues - 楽譜サンプル
I Ain't Got Nothing But The Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
I Ain't Got Nothing But The Blues は、デューク・エリントン(作曲)によるジャズ・スタンダード。ブルースの情感を中心に据えたヴォーカル曲として知られ、ビッグバンド編成から小編成コンボまで幅広い形で演奏される。作詞者は情報不明、初出年も情報不明。英語詞の楽曲だが、歌詞の全文はここでは扱わない。本曲はタイトルの通り“憂鬱(ブルース)しか持ち合わせていない”と嘆く感情を核にし、ジャズの表現語法とブルースの語り口を結び付ける代表例として定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
スウィングを基調とした4ビートのうねりに、ブルーノートやポルタメントを伴う旋律線が乗るのが大きな特徴。歌唱では、語りかけるような間合いとダイナミクスの対比が重要で、コール&レスポンス的にホーン・リフが受け渡すアレンジも相性が良い。テンポ設定はミディアムからややスローまで幅があり、歌詞の嘆きの濃度に合わせて余白を活かす解釈が好まれる。ハーモニーはエリントンらしい色彩的和声が土台にあり、ピアノやギターのイントロ/間奏でブルースの語感を強調するアプローチも一般的。器楽演奏では、テーマの歌心を保ちながら、コーラスごとに音色・ボイシングを変化させる構築力が求められる。
歴史的背景
エリントンはビッグバンド黄金期に、シンフォニックな書法とブルースの感情表現を高次に融合させた作曲家として評価を確立した。本曲もその系譜にあり、バンドの厚みを活かしたサウンドと、ヴォーカリストの語りを前面に出す設計が共存する。初演や初録音の詳細は情報不明だが、ラジオ放送やレコードを通じて広がり、やがて多くの歌手・奏者のレパートリーとなった。ブルースの直截な感情をジャズの洗練で包み込む美学が、時代を超えて受容され続けている。
有名な演奏・録音
基準となるのはデューク・エリントン楽団による演奏で、バンド・アンサンブルとヴォーカル(もしくは器楽のテーマ提示)の呼応が模範例となる。以後、男女ヴォーカリスト、サックス奏者、ギタリスト、ピアニストなど多岐にわたるアーティストが録音を残し、ライブでも定番曲として扱われている。具体的な初出盤・チャート情報・各年の名録音の網羅は情報不明だが、アルバムの中核曲やアンコールで配置されるケースが多く、ブルース・フィーリングのバロメーターとして選ばれやすい。
現代における評価と影響
今日では、ヴォーカルの表現力、英語の発音とリズムの乗せ方、間(スペース)の作り方を学ぶ教材曲として、音大やワークショップでも頻繁に取り上げられる。器楽陣にとっては、シンプルな素材から豊かな陰影を引き出す編曲術と、ソロ構築のセンスを示す格好の舞台でもある。スウィング寄りの解釈からモダンな再ハーモナイズまで許容度が高く、ジャム・セッションでも共有度が高い。結果として、本曲は“歌えるブルース”かつ“彩れるジャズ”として、世代やスタイルを横断する橋渡し役を担っている。
まとめ
I Ain't Got Nothing But The Blues は、ブルースの嘆きをジャズの洗練で描き出す、エリントン作品らしい普遍性を備えた一曲である。詳細な作詞者や初出年は情報不明ながら、ヴォーカル曲としての訴求力と、器楽的発展性の両立が、多様な演奏家に支持されてきた理由だ。基礎的なスウィング感、音色設計、間合いの作法を学ぶ上でも示唆が多く、今後もステージやレコーディングで息長く演奏され続けるだろう。