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I'll Never Be The Same

  • 作曲: MALNECK MATT,SIGNORELLI FRANK
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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I'll Never Be The Same - 楽譜サンプル

「I'll Never Be The Same|楽曲の特徴と歴史」

基本情報

「I'll Never Be The Same」は、作曲をMatt MalneckとFrank Signorelli、作詞をGus Kahnが手がけた1932年の楽曲。発表当時のポピュラー分野から広まり、のちに多くのジャズ奏者に取り上げられてジャズ・スタンダード化した。形式は典型的な32小節のAABAで、流麗な旋律と陰影のある和声が特徴。ボーカル曲としてもインストゥルメンタルとしても定着しており、スタジオ録音からクラブのセッションまで幅広く演奏される。

音楽的特徴と演奏スタイル

しなやかに下降する主題と、半音階的な内声進行を含む和声が作るほのかな哀愁が核。セカンダリー・ドミナントやトニック化を用いたコード運びは、歌心を生かすバラード解釈にも、ミディアム・スウィングにも馴染む。メロディはレガートを基本に繊細なルバートを許容し、シンガーは言葉の間合いで感情の起伏を描く。インストではガイドトーンを軸にしたスムーズなボイシング、内声のクロマチック処理、ターンアラウンドの置換など、リハーモナイズの余地も大きい。

歴史的背景

1932年、アメリカのポピュラー音楽がダンス・バンドからスウィング期へ移行する過程で発表。作曲のマット・マルネックはジャズ/ダンス・バンドの分野で活躍したヴァイオリニスト兼作曲家、フランク・シニョレリはピアニスト/作曲家として知られる。ガス・カーンの流麗な英語詞は恋の余韻と変化を描き、後年のシンガーたちに解釈の余白を与えた。出版を起点にラジオやレコードを通じて浸透し、自然にスタンダード曲集へ組み込まれていった。

有名な演奏・録音

ボーカルではBillie Holidayが印象的な名唱を残し、フレーズの間と語り口で楽曲の繊細さを示した。ギター/ヴァイオリンの名手Django Reinhardt & Stéphane Grappelliは、ホット・クラブ様式で旋律の優雅さをスウィングに溶け込ませた。ピアノのArt Tatumは高度な和声処理と流麗な分散和音で構造を再照明し、インスト演奏の可能性を拡張。これらの録音は、歌・弦・ピアノという異なる文脈での到達点としてしばしば参照される。

現代における評価と影響

本曲はスタンダード集や教育現場でも扱われ、バラード解釈の教材として有用視される。メロディの歌いやすさと和声の含意が、アドリブ時のガイドトーン意識や内声処理の訓練に適しているためだ。選曲頻度は超定番曲に比べ控えめながら、洗練された情感を求める演奏家・シンガーに根強く愛される。録音や配信時には、テンポ設定やイントロ/アウトロの設計で個性を打ち出しやすいレパートリーとして評価が高い。

まとめ

「I'll Never Be The Same」は、端正なAABA構成と叙情的な旋律、柔軟な和声進行が織りなす奥行きによって、ボーカル/インスト双方で長く支持されてきた。1930年代発のポピュラー曲に宿るエレガンスを体現し、解釈の自由度も高い。名演の系譜に学びつつ、自身のテンポ感と音色で感情のグラデーションを描くことが、この曲を生かす鍵となる。