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Russian Lullaby

  • 作曲: BERLIN IRVING
#スタンダードジャズ
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Russian Lullaby - 楽譜サンプル

Russian Lullaby|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Russian Lullaby」は、Irving Berlinが1927年に発表した楽曲。作曲・作詞ともにBerlinによる作品で、当初はポピュラー・ソングとして世に出たが、その後多くのジャズ奏者に取り上げられ、現在ではジャズ・スタンダードとして定着している。タイトルどおり“子守歌”をモチーフにした作品で、歌詞は郷愁や祈り、静かな慰めの情感をたたえる内容。穏やかな旋律と物悲しさを帯びたハーモニーが結びつき、歌ものとしてもインストゥルメンタルとしても映える構造を持つ。

音楽的特徴と演奏スタイル

主調は短調系で演奏されることが多く、東欧的な陰影を感じさせる旋律線が特徴。半音階的な動きや、和声の柔らかな転調感が、哀愁と温もりを同居させる。ジャズでは、バラードからミディアム・スウィングまで幅広いテンポで解釈され、イントロで自由なルバートを用いてから4ビートへと移行するアプローチも一般的。伴奏は、静かな分散和音やサスティンを活かしたピアノ/ギターが合うほか、ホーンによるカウンターラインで旋律のレガート感を引き立てる手法がよく見られる。コーダではディミニッシュやセカンダリードミナントを用いた穏やかな収束が選ばれやすい。

歴史的背景

Irving Berlinはロシア帝国生まれで、のちに米国へ移住した作曲家。20世紀前半のアメリカ音楽を代表する存在であり、本作は彼のルーツに通じる“ロシア的情緒”を、アメリカのポピュラー・ソング文脈に洗練して溶け込ませた点で重要である。1920年代後半はブロードウェイやダンス・ミュージックが隆盛した時期で、心情を普遍的に伝えるメロディと、歌い手の個性が映える設計が支持を集めた。そうした時代性の中で生まれた本曲は、後年のスウィング/ジャズ・シーンに自然と受け継がれていった。

有名な演奏・録音

スウィング期のビッグバンドから小編成コンボ、ヴォーカルもの、ピアノ・トリオまで、多様な編成で録音が残されている。哀愁あるメロディはヴォーカリストの表現力を引き出し、インストゥルメンタルでは抒情的なアドリブ展開に適するため、レパートリーとして幅広く親しまれてきた。具体的な代表的録音の網羅的リストは情報不明だが、歴代のジャズ・アーティストが繰り返し取り上げてきたスタンダードであることは間違いない。

現代における評価と影響

今日でも、短調バラード系スタンダードの一角として演奏機会があり、セッションやリサイタルで“静と動のコントラスト”を作る曲として機能する。教育現場では、歌詞の情感に寄り添うフレージング、ロングトーンの響かせ方、ピアニッシモのダイナミクス設計などを学ぶ題材として有効。アレンジャーにとっても、室内楽的なテクスチャから濃密なボイシングまで対応できる柔軟性が魅力で、時代や編成を超えて表現の余地を与え続けている。

まとめ

Russian Lullabyは、Irving Berlinのメロディ・メイクと抒情性が結晶した一曲。ポピュラーに端を発しながら、ジャズの語法で多面的に開花し、今なお“歌える”美しさと“演れる”自由度を兼ね備える。歌詞の全文はここでは扱わないが、郷愁と慰めの情感を軸に、演者の解釈によって深化する余白が豊かな名曲である。