That's A Plenty
- 作曲: POLLACK LEW

That's A Plenty - 楽譜サンプル
That's A Plenty|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Lew Pollackが1914年に発表したラグタイム起源の楽曲で、今日ではディキシーランド系のジャズ・スタンダードとして定着している。もともとインストゥルメンタルとして広まり、後年に歌詞版も作られた記録があるが、作詞者や初出の詳細は情報不明。多くのバンドがステージのオープナーやクライマックスに配置する、スピード感と明朗さを併せ持つナンバーだ。
音楽的特徴と演奏スタイル
複数のセクションが連なる多主題形式で、軽快な2ビートの推進力が核。トランペット、クラリネット、トロンボーンのフロントによるコレクティブ・インプロヴィゼーションが映え、要所でブレイクやストップ・タイムを挟むアレンジが定番。バンジョーやピアノの刻み、チューバ/ベースの1・3拍の支え、スネアのプレスロールが雰囲気を決定づける。テンポは速めに設定されることが多いが、歌心を損なわないフレージングとダイナミクス設計が説得力を生む。
歴史的背景
1910年代、ラグタイムからニューオーリンズ・ジャズへ移行する過程で生まれたレパートリーとして位置づけられる。ピアノ・ラグの語法を受け継ぎつつ、ダンスホールのダンス・ミュージックとしてバンド編成に最適化され、パレードやクラブで頻繁に演奏された。戦前から戦後のトラッド・ジャズ・リバイバル期にかけて普及し、地域のブラスバンド文化や大学ジャズにまで浸透、スタンダードナンバーとして定着した。
有名な演奏・録音
録音史の初期からトラッド系バンドの定番として数多く記録され、スモール・コンボからブラス重視の大編成まで幅広く取り上げられてきた。フェスティバル、マーチング、学生ジャズのステージでも頻出し、テンポやキー、コーラス構成、ブレイク位置などを各バンドが独自に工夫している。具体的な初録音や特定のヒット記録は情報不明だが、演奏機会の多さが本曲の地位を物語る。
現代における評価と影響
現在もトラディショナル・ジャズのジャム・セッションや教育現場で演奏され、アーリー・ジャズのアンサンブル運動性を学ぶ教材曲として重宝される。シンプルで覚えやすい主題と、ソロ回しの自由度が共存するため、入門者から上級者まで楽しめるレパートリーとして評価が高い。イベントのオープナーやアンコール曲としても機能し、場を一気に華やがせる力を持つ。
まとめ
ラグタイムの血を引く躍動感と、ディキシーランドの集団即興の醍醐味を兼ね備えた一曲。歴史的背景と演奏慣習を押さえれば、テンポ設定やブレイク、コーラス配分などアレンジの幅は大きい。トラッド・ジャズを知るうえで欠かせないスタンダードとして、今後も演奏現場で愛され続けるだろう。