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This Here
- 作曲: TIMMONS BOBBY,HENDRICKS JON

This Here - 楽譜サンプル
This Here|楽曲の特徴と歴史
基本情報
This Here(別名Dis Here)は、ピアニストBobby Timmonsが作曲し、後年にJon Hendricksが歌詞を付けたジャズ・スタンダード。初期の決定的な録音はCannonball Adderley Quintetによる1959年のライヴ作「The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco」で、ソウル・ジャズのスタイルを世に強く印象づけた。以降、ティモンズ自身のリーダー作「This Here Is Bobby Timmons」(1960)でも重要曲として扱われ、器楽版・歌詞版の双方で広く演奏されている。
音楽的特徴と演奏スタイル
ゴスペル由来のリフと手拍子を思わせるグルーヴ感、説得力のあるコール&レスポンス的フレーズが核。ピアノの力強いブロック・コードとブルースの語法が前面に出て、ミディアム〜やや速めのテンポで高揚感を醸す。アレンジはヘッド—ソロ—ヘッドのシンプルな構成が定番で、アドリブではソウルフルなフレーズとスペースの生かし方が鍵となる。小編成コンボやピアノ・トリオに適し、メロディの覚えやすさとリズムの推進力が即興を後押しするため、ライブでの盛り上がり曲として重宝される。
歴史的背景
1950年代末、ハード・バップの熱量にゴスペルやR&Bの感覚を溶け込ませたソウル・ジャズが台頭。その中心にいたのがティモンズであり、「This Here」は同時期の「Moanin’」と並び彼のスタイルを象徴する一曲となった。サンフランシスコのジャズ・ワークショップで収録されたアダレイ・クインテットのライヴは、観客の熱気も相まって楽曲の魅力を広める契機に。のちにHendricksが歌詞を付与し、器楽曲としての強度にヴォーカル表現の可能性を加えた。
有名な演奏・録音
代表例はCannonball Adderley Quintet「The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco」(1959, Riverside)。続いてBobby Timmons「This Here Is Bobby Timmons」(1960, Riverside)における自身の解釈が定番として親しまれる。Hendricksによる歌詞版はヴォーカル・ジャズのレパートリーにも広がり、多様な歌手・グループが取り上げた。映画やドラマでの使用については情報不明。
現代における評価と影響
「This Here」はソウル・ジャズを学ぶうえでの指標であり、リフ構築、グルーヴの作り方、ブルース語法の活用を体得できる教材曲として教育現場でも重視される。クラブからコンサート・ホールまで現場適応力が高く、ピアノを中心としたコンボのレパートリーとして定着。歌詞版の存在により、インストとヴォーカル双方の文脈で生き続ける稀有なスタンダードとして評価されている。
まとめ
This Hereは、覚えやすいリフと魂を揺さぶるグルーヴでソウル・ジャズの精神を体現した名曲。アダレイのライヴ録音で脚光を浴び、ティモンズ自身の演奏やHendricksの歌詞版によって多面的な魅力を獲得した。今日でもステージを熱くする定番として、世代を超えて演奏され続けている。