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Tin Tin Deo

  • 作曲: GILLESPIE DIZZY
#ラテン#スタンダードジャズ
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Tin Tin Deo - 楽譜サンプル

Tin Tin Deo|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Tin Tin Deoは、ディジー・ガレスピーが広めたアフロ・キューバン・ジャズを象徴するスタンダード・ナンバー。楽曲名の由来は情報不明だが、ラテンの躍動感とビバップの鋭さを兼ね備え、コンボからビッグバンドまで幅広く演奏されている。作曲クレジットは資料により表記が揺れ、Chano PozoやGil Fullerの関与を挙げる例もある一方で、ディジー名義で記される版も存在する。本稿では提示情報に基づき作曲者をGILLESPIE DIZZYとする。初出年や初演の詳細は情報不明。主としてインストゥルメンタルとして親しまれ、歌詞の標準版は情報不明である。

音楽的特徴と演奏スタイル

ラテン特有のクラーベ感を軸に、パーカッションの層とベースのトゥンバオが推進力を生む。テーマ部はシンコペーションの効いたフレーズが要となり、マイナー調の色合いとテンションを活かしたハーモニー運びが印象的。多くの演奏では、ヘッドはストレートなラテン・フィールで、ソロに入るとスウィングへ切り替える、あるいはラテンとスウィングを往復する構成が一般的だ。管セクションのコール&レスポンス、ピアノのモントゥーノ、ブラスのアクセントが絡み合い、ビバップ由来の速いラインや拡張和音を乗せることで、ラテンとジャズの美点が有機的に融合する。テンポはミディアム前後が多く、アレンジの自由度が高いのもレパートリーとして定着した理由である。

歴史的背景

1940年代後半から1950年代にかけて、ニューヨークで隆盛したアフロ・キューバン・ジャズの潮流の中で、Tin Tin Deoは“Manteca”と並び語られる重要曲として位置づけられることが多い。ディジー・ガレスピーはキューバ出身のパーカッショニスト、Chano Pozoらとの協働を通じて、ビバップとキューバ由来のリズム語彙を結びつけた。その成果のひとつが本曲であり、ジャズの語法にラテンの重力を導入することで、以後のラテン・ジャズの道筋を明確にした。作曲・編曲クレジットの扱いは時代と版元で差異が見られ、詳細な初出情報も資料により異なるため、本稿では情報不明とする。

有名な演奏・録音

ディジー・ガレスピーによる複数の録音が基準的なリファレンスとして参照される。また、ジャズ・クラブや教育現場のコンボ、ビッグバンドでも定番レパートリーとなっており、ラテン・ジャズのパーカッショニストを擁する編成、現代のスモール・グループによるハードバップ的解釈など、多様なバリエーションが存在する。特定の録音年やアルバム名、映画等での使用に関する確定情報は本稿執筆時点では情報不明だが、ラテン・フィールとビバップ的アドリブの両立を学ぶ教材曲として、数多くの演奏記録が残る。

現代における評価と影響

Tin Tin Deoは、ラテン・ジャズとモダン・ジャズの接点を示す教材として、今なお重要視される。リズム・セクションにとってはクラーベ意識とスウィングへのブリッジング、管楽器奏者にとってはシンコペーションと拡張和音上の即興、編曲者にとってはラテンとスウィングの構成法を学べる貴重な題材である。セッション現場でも通用し、アレンジの自由度が高いことから、新旧のプレイヤーが創意を発揮できる名曲として評価が定着している。

まとめ

Tin Tin Deoは、アフロ・キューバン・リズムとビバップを高次に統合したジャズ・スタンダードであり、演奏実践と教育の両面で価値を持つ。作曲クレジットや初出年などに情報不明な点はあるものの、ディジー・ガレスピーの功績とともに受け継がれ、今日に至るまで多彩な解釈を生み続けている。ラテンの躍動とジャズの即興精神を体感できる格好の一曲だ。