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Homme Et Une Femme ,Un (男と女)
- 作曲: LAI FRANCIS ALBERT

Homme Et Une Femme ,Un (男と女) - 楽譜サンプル
Homme Et Une Femme ,Un (男と女)|作品の特徴と歴史
基本情報
「Un homme et une femme(男と女)」は、作曲フランシス・レイ(LAI FRANCIS ALBERT)、作詞ピエール・バルーによる1966年の映画主題曲。クロード・ルルーシュ監督の同名フランス映画のテーマとして制作され、フランス語版に加えて英語詞版(一般題“A Man and a Woman”)も流通した。映画内ではボーカル版とインストゥルメンタル版の両方が用いられ、シーンの気分に応じて編曲が変化する。代表的な歌唱はピエール・バルーとニコル・クロワジールで、サウンドトラックの中核を成す。
音楽的特徴と表現
穏やかなボサノヴァ風の揺れを基調に、アコースティック・ギターの分散和音、柔らかなストリングス、控えめなパーカッションが重なる。最大の特徴は、“ダバダバダ”で知られるスキャットのモチーフ。言葉の意味を越えてリズムと音色で親密さを描き、都会的でありながら郷愁を誘う感触を与える。メロディはシンプルな反復と小さな変奏を織り交ぜ、過度な起伏を避けることで、登場人物の心の揺らぎや余白を照らし出す。ミキシングも密着感が強く、映像のクローズアップと共鳴する室内的な音響設計が印象的である。
歴史的背景
1960年代半ばのフランス映画界では、恋愛や日常を軽やかに切り取る新しい感性が広がっていた。本作の音楽は、派手なオーケストレーションに頼らず、簡潔な主題と現代的なビート感で物語の余情を支えるアプローチを提示。映画「男と女」は1966年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、国際的な注目を集めた。テーマ曲も同時に知られるようになり、映画音楽における“口ずさめる主題”の価値を改めて印象づけた。
使用された映画・舞台(該当時)
本テーマは映画「男と女」(監督:クロード・ルルーシュ/出演:アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニャン)の主題として使用。回想や移動、沈黙の間を埋める場面で繰り返し登場し、登場人物の距離感や時間の流れを音楽的に可視化する役割を担った。ボーカル(ピエール・バルー、ニコル・クロワジール)とインスト版が効果的に切り替わり、同一主題の異なる表情が映画全体の統一感を生み出している。
現代における評価と影響
「Un homme et une femme」は、フランシス・レイの代表作として今も広く親しまれ、多数のアーティストによりカバー・編曲が行われている。英語詞版の普及、インストゥルメンタルのアレンジ、ジャズやラウンジ寄りの再解釈など、フォーマットを越えて継続的に演奏される稀有な主題である。映画音楽の領域では、簡素な動機とスキャットだけで情緒を立ち上げる手法の成功例としてしばしば言及され、映像と音楽の一体化を示す古典的リファレンスとなっている。
まとめ
「男と女」のテーマは、親密でミニマルな語法により、恋愛映画の感情曲線を穏やかに導く。スキャットのモチーフ、ボサノヴァ的リズム、柔らかなオーケストレーションが一体となり、時代を超える普遍性を確立した。映画と音楽が相互に高め合った典型例として、現在もなおリスナーと映像制作者の双方から支持される名曲である。