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First Time Ever I Saw Your Face (The)
- 作曲: MCCOLL EWAN

First Time Ever I Saw Your Face (The) - 楽譜サンプル
First Time Ever I Saw Your Face (The) |歌詞の意味と歴史
基本情報
「First Time Ever I Saw Your Face(The)」は、英国のフォーク歌手・作曲家イーワン・マッコール(Ewan MacColl)が1957年に書いたバラード。恋人であり後に妻となるペギー・シーガーのために作られ、当初は英国フォーク・クラブのレパートリーとして広まりました。シンプルな旋律と語り口の親密さが特徴で、後年の数多くのカバーで楽曲そのものの普遍性が際立ちます。作曲・作詞ともマッコールによる作品で、ジャンルはフォークに位置づけられます。
歌詞のテーマと意味
歌詞は「大切な人の顔を初めて見た瞬間」に生じる圧倒的な感情を、静かな敬虔さで描きます。誇張や劇的な言い回しを避け、親密な語りと自然のイメージを用いて、愛の深さ・安らぎ・永続性を丁寧に紡ぐのが要点。比喩は大げさにならず、呼吸や鼓動といった身体感覚に寄り添いながら、相手の存在が世界の見え方を変えてしまうという核心に迫ります。結果として、聴き手に余白を残し、個人的な記憶や情景を投影しやすい構造になっています。
歴史的背景
1950年代後半の英国フォーク・リバイバルは、伝承歌の再評価と新たな創作を並行させる動きでした。マッコールはその中心人物の一人で、社会的メッセージ性の強い作品と並び、親密な恋愛歌でも評価を得ます。本曲はクラブ文化とラジオ放送を通じて浸透し、のちにアメリカのシンガーたちにも取り上げられる素地を作りました。フォークの語りの美学を踏まえつつ、時代や地域を越える普遍性を体現した点が特筆されます。
有名な演奏・映画での使用
決定的な再評価を生んだのが、ロバータ・フラックの解釈です。彼女は1969年のアルバム『First Take』でレコーディングし、緩やかなテンポと余白を活かしたアレンジで、深い親密さを前面に。1971年、クリント・イーストウッド監督の映画『恐怖のメロディ(Play Misty for Me)』に使用され、翌1972年に全米シングルチャートで1位を獲得。さらに第15回グラミー賞(1973年)でレコード・オブ・ザ・イヤーとソング・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。これにより、フォーク起源の楽曲がポピュラーのメインストリームへと橋渡しされました。
現代における評価と影響
本曲は結婚式や記念日の定番だけでなく、オーディション番組や映画・ドラマの親密な場面でも頻繁に選ばれます。テンポや伴奏を大きく変えても核心が損なわれにくく、シンガーの表現力を映す“試金石”としても機能。フォーク、ソウル、ポップスの垣根を超えるスタンダードとしての位置を確立しています。
まとめ
シンプルな言葉と旋律が、時間と文脈を超えて響く稀有なラブ・ソング。フォークの土壌から生まれ、映画を契機にポップ史へ刻まれた歩みは、作品の普遍性と解釈の豊かさを示します。静けさの中に感情の高まりを宿すこの曲は、今なお第一線のスタンダードです。