李香蘭(山口淑子)
蘇州夜曲
- 作曲: 服部 良一

蘇州夜曲 - 楽譜サンプル
蘇州夜曲|歌詞の意味と歴史
基本情報
服部良一が作曲した「蘇州夜曲」は、日本の流行歌/歌謡曲として広く親しまれる名曲。作詞は西條八十。初出は1940年公開の映画「支那の夜」の挿入歌で、中国・蘇州の情景を題材にしたロマンティックな世界観が魅力である。以後、多数の歌手に歌い継がれ、昭和歌謡を代表するスタンダードの一つとなった。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、静かな水路や柳のほとり、月光に照らされた蘇州の夜景を背景に、寄り添う二人の想いを繊細に映し出す。異国情緒のある地名や風物を借景にしつつ、別れや無常感を匂わせる表現が配され、甘美さとほろ苦さが同居する。情景描写が多く、直接的な告白を避ける日本語の婉曲美が際立つ。
歴史的背景
発表は1940年。東アジアを題材にした映画や楽曲が多く制作された時代背景のもと、服部良一は西洋和声と五音音階風の旋律を折衷し、異国趣味の情感を洗練させた。映画公開とレコード流通により曲は瞬く間に浸透し、戦前期の都会派サウンドを象徴する一篇として定着していく。
有名な演奏・映画での使用
本曲は映画「支那の夜」で印象的に用いられ、スクリーン発のヒットとなった。戦後は歌手による数多くのカバーに加え、ジャズ・アレンジや器楽版も盛んに録音されている。のちの映画・ドラマ・舞台で引用・挿入される例もあり、時代を越えて映像音楽と親和性の高いレパートリーとして生き続けている。
現代における評価と影響
現在も昭和歌謡のスタンダードとして高い評価を受け、リイシューや配信で新たな聴き手に届いている。旋律運びの美しさと簡潔な構成は、歌唱・編曲の教材としても扱われ、ジャズやポップスのライブで取り上げられる機会も多い。異国情緒の表現とロマン派的抒情のバランスは、作曲・プロデュースの指針として参照され続けている。
まとめ
「蘇州夜曲」は、映画発のヒットにして、日本語の抒情性と洗練された和声感が結晶した一曲。時と場を選ばず響く普遍性を備え、世代を超えて歌い継がれる名旋律である。