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Fragile
- 作曲: SUMNER GORDON MATTHEW,STING

Fragile - 楽譜サンプル
Fragile|歌詞の意味と歴史
基本情報
1987年発表のスティングの楽曲。アルバム『…Nothing Like the Sun』収録。作曲はSting(本名Gordon Matthew Thomas Sumner)。繊細なナイロン弦ギターと控えめなパーカッションを核にした小編成で、英語版に加えスペイン語「Fragilidad」とポルトガル語版も制作。親密な声の距離感と、室内楽的な音像が特徴で、コンサートではしばしばオープニングを担う代表曲として位置づけられている。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“壊れやすさ”は、人の命と平和の脆さを指す。自然の美と暴力の愚かさを対置し、報復の連鎖では何も生まれないという非暴力の姿勢を静かに訴える。直接的なスローガンに頼らず、普遍的な哀惜と共感を喚起する点が長く愛される理由。個人的喪失の痛みを、誰にでも通じる言葉と比喩に昇華し、聴き手がそれぞれの記憶に重ね合わせやすい余白を残している。
歴史的背景
制作当時、スティングは中米の紛争と市民の犠牲に心を痛めていた。ニカラグアで亡くなった米国人技師ベン・リンダーへの追悼が着想に影響した事実が広く知られている。冷戦末期の国際情勢の中で、個人の生命の尊厳を見つめ直すメッセージは強い共鳴を呼んだ。『…Nothing Like the Sun』全体に流れる人道的視点とも響き合い、政治を超えて人間の倫理へ迫る作品として受け止められた。
有名な演奏・映画での使用
2001年9月11日にトスカーナで収録されたライヴ『…All This Time』では、本曲が冒頭で演奏され犠牲者へ捧げられた記録が残る。多くのアーティストにカバーされ、チャリティ公演や追悼の場でも頻繁に選曲。スペイン語・ポルトガル語版はEP『Nada como el sol』にも関連収録され、国境と言語を越えて広まった。映画での顕著な使用は情報不明。
現代における評価と影響
ボサノヴァ的な揺らぎを帯びたアコースティック・バラードとして、スティングの代表曲に数えられる。ジャズ/ポップ双方で演奏され、ギタリストの定番曲にも定着。報道特番や記念式典など厳粛な文脈でも違和感なく機能し、平和や人権を主題とするイベントの象徴的レパートリーとして生き続ける。静かな編成ゆえに歌詞が前景化し、メッセージ性と音楽性の均衡が高く評価されている。
まとめ
Fragileは、技巧を誇示せず言葉と音数を抑えることで、暴力の無意味さと命の尊さを普遍的に伝える稀有な曲である。時代や場所を超えて共感を呼ぶメッセージ性と、簡素ながら色彩豊かなサウンドが相まって、今も聴き継がれている。静かな祈りのような余韻は、私たちに他者を思いやる想像力の重要性を思い出させる。