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Try To Remember
- 作曲: SCHMIDT HARVEY

Try To Remember - 楽譜サンプル
Try To Remember|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Try To Remember」は、作曲SCHMIDT HARVEY(ハーヴィ・シュミット)によるバラードで、ミュージカル『The Fantasticks』の楽曲として知られる。作詞はTom Jones(トム・ジョーンズ)。初演は1960年のオフ・ブロードウェイで、物語の幕開けを告げる重要なナンバーとして配置された。初演キャストではEl Gallo役のJerry Orbach(ジェリー・オーバック)が歌唱し、その温かな語り口とともに楽曲の存在感を決定づけた。以後、舞台録音やカバーを通じて広く親しまれ、ポップ・スタンダードとして定着している。
歌詞のテーマと意味
歌詞は“覚えていてほしい”という穏やかな呼びかけで、若き日や初恋、季節の移ろいを手がかりに記憶をたぐり寄せる。具体的な情景を丁寧に積み重ね、失われた時間を美化するのではなく、過去と現在を静かに結び直す。その語りは聴き手に内省を促し、懐古の感情を普遍的な人生の実感へと昇華させる。舞台上では観客を物語世界へ招き入れる序章的役割を担い、作品全体のテーマである“成長と気づき”をやさしく照らし出す。
歴史的背景
『The Fantasticks』は小規模編成と最小限の装置で長期上演を記録したオフ・ブロードウェイの代表作。その象徴的楽曲が「Try To Remember」だ。1960年代のアメリカ音楽界ではフォークやバラードが大きな支持を得ており、本曲もその親和性から舞台を越えて広まった。複雑な技巧よりも語りとメロディの力で勝負するスタイルは、当時のミュージカル楽曲の一潮流を体現し、後続のシンガーによる解釈を呼び込む素地を作った。
有名な演奏・映画での使用
初演のJerry Orbachによる歌唱は原点として知られ、以後The Kingston TrioやHarry Belafonte、Ed Ames、Andy Williamsなど、多くの歌手が録音してレパートリー化した。フォーク寄りの解釈からクラシカルな伴奏、語りを強めたアレンジまで幅広く、カバーを通じて曲の普遍性が裏づけられた。また、映画版『The Fantasticks』でも用いられ、舞台同様に物語の導入を担う重要曲として機能している。
現代における評価と影響
「Try To Remember」は、ミュージカルおよびポップ・スタンダードの文脈で高い評価を受け続ける。オーディションやリサイタル、合唱編曲などの現場で取り上げられ、語りと歌のバランス、言葉の明晰さ、自然なレガートが試される教材曲としても重宝される。録音や演奏が世代ごとに更新されることで、楽曲の解釈は拡張を続け、懐古と成熟という普遍テーマが今日のリスナーにも届いている。
まとめ
舞台の名曲でありながら、時代とジャンルを越えて歌い継がれてきた「Try To Remember」。簡素で覚えやすいメロディと語りかける言葉が、聴き手の個人的な記憶と結びつき、唯一無二の余韻を生む。ミュージカル史の文脈とポップ・スタンダードとしての広がり、その両面から味わう価値のある一曲だ。