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River Of No Return ,The
- 作曲: NEWMAN LIONEL

River Of No Return ,The - 楽譜サンプル
「River Of No Return ,The|作品の特徴と歴史」
基本情報
「The River of No Return」は、作曲ライオネル・ニューマン、作詞ケン・ダービーによる1954年の楽曲。20世紀フォックス製作の映画『帰らざる河』(主演マリリン・モンロー/ロバート・ミッチャム)の主題歌として発表され、スコア全体の中心モチーフにも位置づけられた。映画の物語性と結びつく形で設計され、歌としても劇伴としても機能することが大きな特徴である。歌詞の全文は著作権のため掲載しない。
音楽的特徴と表現
穏やかなテンポのバラードで、広がりのある旋律線が大自然のスケール感を描き出す。哀愁を帯びた和声進行と、波打つように反復する主題動機が“戻れない河”の不可逆性を象徴。ギターやストリングスを核に、管弦楽が徐々に厚みを増すアレンジは、登場人物の感情の高まりと景観の雄大さを併せて表現する。歌唱版とオーケストラ版の間でテーマが一貫し、物語の統一感を生む設計が秀逸だ。
歴史的背景
1954年、ハリウッドがシネマスコープなど新技術でスケール感を競った時期に公開。フォックスの音楽部門を担ったニューマンは、主題歌の旋律を劇伴へ有機的に織り込む手法を取り、西部劇の冒険と葛藤を一つのテーマで貫いた。ケン・ダービーの歌詞は物語の情景や心情と呼応し、主題歌の言葉が劇中の意味合いを補強する構造を作る。スタジオ全盛期のサウンドクラフトの結晶といえる。
使用された映画・舞台(該当時)
映画『帰らざる河』において、ヒロインが歌うダイジェティック・ソングとして登場し、場面転換やエンドロールでは管弦楽版が再帰する。同一テーマを状況に応じてテンポや編成、ダイナミクスで変奏し、人物の内面と自然描写を橋渡しする役割を担った。主題歌とスコアの親密な関係により、観客の記憶に残る“映画の顔”が形成されている。
現代における評価と影響
モンローの歌唱で広く知られ、サウンドトラックの再発や映画音楽コンピレーションに継続的に収録されるなど定着している。複数アーティストによるカバーも存在し、ハリウッド黄金期の主題歌の典型例として研究・紹介の対象となってきた。西部劇における“歌うモチーフ”の成功例として、映像と音楽の相互補完のモデルを提示し、後続の映画音楽にも示唆を与えている。
まとめ
「The River of No Return」は、記憶に残るシンプルな旋律を主題歌とスコアの両輪で機能させ、物語体験を強化した映画音楽の秀作である。ニューマンの精緻な編曲と、言葉の響きを活かすダービーの作詞が重なり、作品世界を象徴する“歌えるテーマ”を確立。半世紀を超えても色褪せず、映画と音楽の関係性を学ぶ上で外せない一曲となっている。