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Days Of Wine And Roses
- 作曲: MERCER JOHN H, MANCINI HENRY NICOLA

Days Of Wine And Roses - 楽譜サンプル
Days Of Wine And Roses|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Days Of Wine And Rosesは、作曲ヘンリー・マンシーニ(Henry Nicola Mancini)、作詞ジョン・H・マーサー(John H. Mercer)による楽曲。1962年公開の映画『酒とバラの日々(Days of Wine and Roses)』のために書かれ、翌年のアカデミー賞歌曲賞を受賞した。映画起源のバラードながら、その旋律と和声の美しさからジャズ・ミュージシャンに広く取り上げられ、現在では定番のジャズ・スタンダードとして定着している。ボーカル曲としても、インストゥルメンタルとしても演奏される点が特長で、さまざまな編成に適応する柔軟性を持つ。
音楽的特徴と演奏スタイル
形式は32小節のAABAが広く用いられ、叙情的なメロディと滑らかな和声進行が核となる。ジャズ演奏ではセカンダリードミナントやトライトーン・サブスティテューションを含むリハーモナイズがしばしば行われ、内省的なバラードからミディアム・スウィング、ボサ・ノヴァ風まで多様に解釈される。キーは演者や編曲により異なり、ボーカル版・器楽版ともに各レンジに合わせて移調されることが多い。メロディはステップワイズな動きと印象的な跳躍を織り交ぜ、サビで情感が高まる構造が聴き手の記憶に残る。
歴史的背景
本曲はブレイク・エドワーズ監督による映画『酒とバラの日々』の主題歌として書かれ、物語のテーマである喪失と依存、過ぎ去る幸福の儚さを象徴する。タイトルのフレーズは19世紀詩人アーネスト・ダウスンの詩に由来し、マーサーの詞は成熟した感傷と現実の苦味を伴う。マンシーニは映画音楽の巨匠として、旋律の親しみやすさとドラマ性のバランスに長け、本曲でもその資質が発揮された。映画公開と並行してシングルやアルバムで広く流通し、映画音楽とポピュラー/ジャズの橋渡しとなった点でも重要である。
有名な演奏・録音
ヘンリー・マンシーニ楽団による演奏は映画版の雰囲気を伝える代表例で、ボーカルではアンディ・ウィリアムスの録音が広く知られる。ジャズ界ではビル・エヴァンス、オスカー・ピーターソン、ウェス・モンゴメリー、スタン・ゲッツ、エラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラ、トニー・ベネットら多くの巨匠が解釈を残し、ピアノ・トリオ、サックス・クァルテット、ビッグバンドまで幅広い編成で録音されている。各演奏はテンポ感やハーモニー処理が異なり、同曲の懐の深さを示している。
現代における評価と影響
本曲はリアルブック等の標準的レパートリーに収録され、ジャム・セッションや音楽教育の現場でも頻繁に取り上げられる。ボーカリストにとっては言葉のニュアンスとフレージングの妙味、インスト奏者にとっては抒情性と和声探求の余地が魅力で、時代を超えて演奏の新解釈を生み続けている。映画音楽発のスタンダードがジャズの基本書法に組み込まれた好例として、作曲と作詞の統合的な力、そして普遍的なテーマ設定の重要性を提示し続けている。
まとめ
Days Of Wine And Rosesは、映画由来の美しい旋律と詩情に富む詞が融合し、ジャズ・スタンダードとして不動の地位を築いた。AABA形式を土台に多様なテンポとハーモニーで再創造され、世代やジャンルを越えて演奏される本曲は、マンシーニとマーサーの卓越した職能を示す永続的レパートリーである。