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Great Escape March ,The (大脱走のマーチ)
- 作曲: BERNSTEIN ELMER

Great Escape March ,The (大脱走のマーチ) - 楽譜サンプル
Great Escape March ,The (大脱走のマーチ)|作品の特徴と歴史
基本情報
「大脱走のマーチ」は、作曲家エルマー・バーンスタインが1963年公開のアメリカ映画『大脱走』(原題:The Great Escape)のために書いた行進曲風のテーマ。原題は“The Great Escape March”。映画音楽の中でも抜群の知名度を誇り、明朗で記憶に残る旋律が作品全体の顔となっている。インストゥルメンタルで、歌詞は存在せず、劇伴の中で繰り返し用いられる主題として機能する。日本では「大脱走のマーチ」の名称で広く浸透し、吹奏楽やブラスバンドの定番レパートリーとしても親しまれている。
音楽的特徴と表現
明快な行進曲調を基調に、力強いブラスと歯切れの良いスネアドラムが牽引する。シンプルで覚えやすい主題は、短い動機の反復と明確なフレーズ構造により大勢で口ずさみやすい設計となっている。木管の対旋律や金管のユニゾン、巧みな和声進行による高揚が、軽快さと英雄的な昂揚感を両立。過度な悲壮感を避けつつ、仲間意識や不屈の精神を映し出す音色設計が印象的で、映画の群像劇的スケールを支える。テンポ感は推進力に富み、終結に向けてのダイナミクスの積み上げも秀逸だ。
歴史的背景
1960年代ハリウッドで制作された第二次世界大戦を題材とする大作の文脈に位置づけられる。バーンスタインはドラマの重さを音楽で過剰に煽らず、ユーモアとアイロニーを含む行進曲で登場人物の結束や希望を描出。これにより、戦時下の極限状況を描く物語と、観客が共感しやすい軽快さのバランスを実現した。公開当時から旋律のキャッチーさが話題となり、映画の成功とともにテーマそのものも独立した人気曲として広まっていった。
使用された映画・舞台(該当時)
本テーマは映画『大脱走』(1963年、監督:情報不明)において、タイトルバックをはじめ場面転換やモンタージュで繰り返し登場し、物語全体の統一感を与えるレイトモティーフとして機能する。捕虜収容所での協力や計画の進展を示す場面に明るい行進曲調が配され、キャラクターの士気を象徴的に支える。劇中での効果的な配置により、観客はテーマを聴くだけで登場人物の結束や「抜け出す意思」を直感的に想起できる構造が築かれている。
現代における評価と影響
「大脱走のマーチ」はコンサートホールや屋外パレード、学校・市民吹奏楽の演奏会で定番化。軍楽隊やブラスバンドのレパートリーとしても頻繁に取り上げられる。その親しみやすい旋律はスポーツ会場などでも口笛で親しまれ、世代や地域を超えて共有されるメロディとなった。映画音楽のテーマとしては稀有な大衆性と芸術性を兼ね備え、戦争映画の枠を超えた普遍性を獲得。サウンドトラック史におけるバーンスタインの代表作の一つとして不動の評価を得ている。
まとめ
「大脱走のマーチ」は、行進曲の明朗さと映画的ドラマツルギーを融合させた傑作テーマである。覚えやすい旋律、精緻なオーケストレーション、シーンとの結びつきの巧みさにより、半世紀以上を経ても色褪せない魅力を放つ。映画を未見でも楽しめ、鑑賞後には物語の記憶を呼び戻す強力なアイコンとして機能。映画音楽が持ちうる物語支援と大衆浸透の両立を示す代表例と言えるだろう。