Runaway
- 作曲: CROOK MAX D,SHANNON DEL

Runaway - 楽譜サンプル
Runaway|歌詞の意味と歴史
基本情報
Runawayは、Del ShannonとMax Crookの共作による1961年のヒット曲。クレジットはCROOK MAX D, SHANNON DEL。Shannonの力強いファルセットと、Crookが考案した鍵盤楽器「ムジトロン(Musitron)」のソロが強烈な個性を放つ。発売と同年に全米チャート1位を獲得し、オールディーズを代表する一曲として定着した。失われた恋を嘆く内容と、スピード感あるコード進行が相まって、短い尺の中に切迫感と印象的なフックを凝縮している。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、主人公が去ってしまった恋人を想い、理由を探し続ける心情を描く。歩きながら思索する独白形式で、喪失の痛み、後悔、そして「彼女はなぜ逃げたのか」という問いが反復される。タイトルの“Runaway”は、恋人の不在と時間の不可逆性を象徴し、答えのない問いがコーラスで高揚することで、未練と焦燥を両立させる表現になっている。言葉数は多くないが、ファルセットのスパイクとムジトロンの輪郭的な旋律が、歌詞の孤独感に鋭い色彩を与える。
歴史的背景
本作が登場した1960年代初頭は、ロックンロールがポップへと洗練されていく過渡期。Runawayはその潮流の中で、電子的な音色を大胆に取り入れた先進性を示した。1961年に全米1位を獲得し、国際的にもヒット。シングル主導の音楽産業において、短い尺・強いフック・特徴的なブレイクというヒットの定石を端的に体現し、ブリティッシュ・インヴェイジョン前夜のアメリカン・ポップを象徴する作品となった。
有名な演奏・映画での使用
Runawayは多数のアーティストによりカバーされ、オールディーズ番組や旧譜コンピレーションの定番曲として広く親しまれている。特筆すべきは、1980年代のテレビドラマ『クライム・ストーリー』でDel Shannon自身が再録音し、主題歌として用いられたこと。原曲のムジトロン的フレーズやファルセットは、カバーでも重要なモチーフとして踏襲されることが多く、アレンジの自由度と同時にアイコニックな核を持つ楽曲であることを示している。
現代における評価と影響
ムジトロンによる鋭いリードは、シンセサイザー/エレクトロニック・キーボードの大衆音楽への展開を予感させ、後年のポップ・ロックに先駆的な足跡を残した。ファルセットをクライマックスに据える構造は、ロマンティックな失恋ソングの定石として継承され、現在も映像・広告・プレイリストでの起用が続く。Runawayは、簡潔なフォームに革新的なサウンドアイコンを組み合わせることで時代を超える再生力を持つ典型例として評価されている。
まとめ
Runawayは、喪失の感情を直截に描いた歌詞、記憶に残るファルセット、そしてムジトロンの先鋭的リードが三位一体となったポップの金字塔である。1961年の大ヒット以降、メディア使用やカバーを通じて命脈を保ち、今なお入門者にも通好みの耳にも響く普遍性を備える。時代背景と技術革新が交差した成果として、音楽史的価値と鑑賞的魅力の両面で再評価に耐える一曲だ。