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Lester Leaps In
- 作曲: YOUNG LESTER

Lester Leaps In - 楽譜サンプル
Lester Leaps In|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Lester Leaps Inは、テナー・サックス奏者Lester Youngが作曲した器楽曲で、スウィング期を代表するジャズ標準曲の一つ。初期の代表的録音はCount Basieの小編成バンドによる演奏で知られ、1939年に広く注目を集めました。歌詞は存在せず、アドリブを中心に展開されるインストゥルメンタル。32小節AABA形式で、いわゆる“リズム・チェンジ(I Got Rhythmのコード進行)”に基づく構造が核。原曲はB♭調で演奏されることが多く、テンポは中速からアップテンポまで幅広く取られます。
音楽的特徴と演奏スタイル
主題はリフを基礎にした簡潔なフレーズで構成され、ソロイストの即興を引き立てる設計。Aセクションは機能和声に基づく明快な進行、Bセクションは循環的なドミナント進行を活かし、ライン構築の巧拙が現れます。Young特有の柔らかい音色、レイドバックしたタイム感、滑らかなメロディック・ラインは本曲で顕著。リズム・セクションは4ビートのウォーキング・ベース、ギターの4つ切り、スパースなピアノ・コンピング、スウィングするライドシンバルが基盤。ソロ回し、トレーディング、テーマ回帰というジャム・セッション的運びが定番です。
歴史的背景
1930年代末のカンザスシティ系スウィングの文脈で生まれた本曲は、ビッグバンドの勢いとスモール・コンボの即興性を結び付けた象徴的存在。Lester Youngは、当時の主流だった力強いテナー奏法に対し、クールで線的なアプローチを提示し、旋律性を重視する美学を確立しました。Lester Leaps Inはその美学を端的に示すレパートリーとして機能し、スウィングからモダンへの過渡期におけるアドリブ言語の洗練に寄与。以後、ジャム・セッションの定番曲として定着していきます。
有名な演奏・録音
もっとも知られるのは、Count Basieの小編成グループによる1939年の録音で、Youngの伸びやかなコーラスが大きな評価を得ました。以降、本曲は多くのテナー奏者やコンボのレパートリーに組み込まれ、コンサートやジャムで頻繁に取り上げられます。Jazz at the Philharmonicの舞台などでも演奏機会が多く、スウィングの熱気と即興の妙味を伝える格好の素材として愛聴・愛奏されてきました。
現代における評価と影響
今日でもLester Leaps Inは、リズム・チェンジにおけるライン構築、タイム感、モチーフ展開を学ぶ実践教材として重要視されます。テンポ設定やキーの柔軟性が高く、管・弦・ピアノトリオなど編成を問わず取り上げやすいのも魅力。Youngの美学—歌うような旋律線と軽やかなスウィング—は、多くのテナー奏者のみならず、楽器を問わず即興家全般に影響を及ぼし続けています。配信時代でも録音・動画が豊富で、研究・鑑賞ともにアクセスが容易です。
まとめ
Lester Leaps Inは、簡潔な主題と豊かな即興余地、そしてスウィングの旨味が凝縮された名曲。歴史的録音に触れつつ、自身のフレージングとタイムを磨く格好の題材です。リズム・チェンジの要点を体得する入口としても最適で、初学者から上級者まで長く付き合えるスタンダードと言えるでしょう。