Don't Know Why
- 作曲: HARRIS JESSE

Don't Know Why - 楽譜サンプル
Don't Know Why|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Don't Know Why」はHARRIS JESSEによる楽曲で、世界的にはNorah Jonesが2002年にBlue Noteから発表したアルバム『Come Away with Me』収録バージョンで広く知られました。翌年のグラミー賞でレコード・オブ・ザ・イヤーおよびソング・オブ・ザ・イヤーなどを受賞し、静謐なピアノと温かな歌声が象徴する21世紀初頭の名曲として定着。作曲・作詞はいずれもJesse Harrisで、穏やかなテンポとジャズ・ポップの趣きを持ちながらも、ポップ・フィールドで大きな成功を収めています。
歌詞のテーマと意味
本曲の核は、届かなかった想いと自己内省です。主人公は“なぜ自分はあの時そこへ行かなかったのか”という後悔と不可解さに揺れ、静かな情景描写の中で心の空白を見つめ続けます。愛する人との距離を埋められない無力感、踏み出せなかった一歩への悔い、いまなお残る未練——それらが淡いメロディの中ににじみ、断定的な答えを示さない言葉選びが聴き手の解釈を誘発。過度なドラマ性ではなく、余白とためを活かした表現が、普遍的な失恋の感覚を静かに浮かび上がらせます。
歴史的背景
Jesse Harrisによるソングライティングはニューヨークのシンガー・ソングライター的文脈に根差し、Norah Jonesの歌唱と出会うことで独自の陰影を獲得しました。2002年のリリースは、ラウドなサウンドが目立った当時のチャートにおいて、アコースティックでジャジーな質感を前面に押し出した希有な成功例となり、Blue Noteレーベルの新しい聴衆拡大にも貢献。アルバムとともに世界的ヒットを記録し、本曲は同時代のポップとジャズの橋渡し的存在となりました。
有名な演奏・映画での使用
最も広く知られるのはNorah Jonesによるスタジオ録音と数多くのライブ・パフォーマンスです。繊細なピアノ伴奏と呼吸のようなフレージングは、カバーを志すシンガーにとって模範となり、多くのアーティストがコンサートやセッションで取り上げています。映画やドラマ、CMでの具体的な使用情報は情報不明ですが、放送や配信の現場でしばしば耳にする楽曲として定着しています。
現代における評価と影響
本曲は“静けさの強さ”を示した代表例として、配信時代でも長く聴かれ続けています。ヴォーカル・ジャズやポップの現場では、レパートリーの定番として教育機関やワークショップで扱われる機会も多く、発声やダイナミクス、間の取り方を学ぶ教材としても評価が高いです。シンプルなコード感とメロディは編曲の自由度が高く、少編成からビッグバンド風まで幅広く適応可能で、時代や編成を超える柔軟性が愛される理由となっています。
まとめ
「Don't Know Why」は、Jesse Harrisの洗練された筆致とNorah Jonesの声が結び付くことで普遍性を獲得した、ジャズ・ポップの金字塔です。明確な答えを提示しない歌詞と、控えめで滋味深いサウンドが、聴くたびに異なる感情の層を開きます。静かに寄り添う一曲を探すなら、時代を超えて響く本作は最適の選択と言えるでしょう。