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Every Time We Say Goodbye

  • 作曲: PORTER COLE
#スイング#スタンダードジャズ
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Every Time We Say Goodbye - 楽譜サンプル

Every Time We Say Goodbye|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Every Time We Say Goodbye」は、作曲家コール・ポーターによる1944年の楽曲。ブロードウェイ系のレビュー作品のために書かれ、のちにアメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードとして定着した。原初の上演や初演歌手の詳細は情報不明だが、のちの録音を通じて広く知られるようになった。形式はスタンダードな32小節のAABAで、歌詞を伴うバラードとして演奏されることが多い。恋人たちの別れ際に募る感情を、洗練された旋律と巧みな和声で描く名作である。

音楽的特徴と演奏スタイル

最大の聴きどころは、歌詞で“長調から短調への変化”が示される場面に合わせ、実際に調性が長調から短調へと移ろう構造的仕掛け。これによりテキストと和声が高いレベルで一致し、別れの苦味を音楽的に可視化している。Aセクションは穏やかで歌いやすい旋律線を持ち、B(ブリッジ)では転調やセカンダリー・ドミナントが重なり情緒を深める。テンポはスロー~ミディアムのバラードが主流で、イントロに自由なルバートを置くアレンジや、ピアノ・トリオの繊細な伴奏、サクソフォンやトランペットの抒情的ソロなど、多様な解釈が可能だ。

歴史的背景

第二次世界大戦期のアメリカで生まれた本作は、都会的な機知と深い情感を併せ持つポーター節の円熟を示す。ジャズ歌手・器楽奏者のレパートリーに早期から組み込まれ、戦後のレコード産業の発展と放送メディアの普及によって拡散。ステージからレコード、そしてジャズ教育の現場へと受け継がれ、標準曲としての地位を確立した。初演に関する細部(上演の制作体制・初演キャスト等)は情報不明。

有名な演奏・録音

代表例として、エラ・フィッツジェラルドが「Cole Porter Song Book」(1956)で残したヴァージョンは模範的な歌唱として評価が高い。ジョン・コルトレーンは「My Favorite Things」(1960)で取り上げ、ソプラノ・サックスの抒情を通じて楽曲のハーモニーを新たな文脈で照射した。このほか多くのヴォーカリストやピアニスト、サックス奏者が録音しており、編成やテンポを問わず説得力を発揮する点も、スタンダードとしての強度を示している。

現代における評価と影響

現在もジャム・セッションや音楽大学の実技・理論教育で頻繁に扱われ、歌詞と和声の有機的な連携を学ぶ最適例として引用される。映画・ドラマでの具体的使用例は情報不明だが、別れと再会をめぐる普遍的なテーマのため、映像音楽の現場でも適合性が高い。プレイヤーにとっては音程感とブレス、フレージング、ハーモニーの読み替え(リハーモナイズ)の練習曲としても価値が大きい。

まとめ

「Every Time We Say Goodbye」は、詩情と和声設計が見事に組み合わさったジャズ・スタンダード。AABAの端正な形式の中で、調性の転換によって別れの痛みを音楽的に描き切る。名演の蓄積と演奏自由度の高さが、時代を越えた生命力を支えている。