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Evidence

  • 作曲: MONK THELONIOUS S
#スタンダードジャズ
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Evidence - 楽譜サンプル

Evidence|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Evidenceは、セロニアス・モンク(表記:MONK THELONIOUS S)による器楽曲で、現在はジャズ・スタンダードとして広く演奏されています。歌詞は存在せず、形式は典型的な32小節AABA。スタンダード曲「Just You, Just Me」のコード進行を基にしたコンポジション(いわゆるコントラファクト)として知られ、モンクならではの知的な語呂合わせから、別名「Justice」と呼ばれることもあります。初演・初録音の厳密な年は情報不明ですが、モンクは生涯にわたり繰り返し演奏・録音しており、その独創性を象徴するレパートリーの一つです。

音楽的特徴と演奏スタイル

もっとも顕著なのは、主題のリズム処理と間(スペース)の使い方です。旋律は角張った跳躍とオフビートの強調を多用し、拍のまたぎや休符を巧みに配置することで、聴感上の「ズレ」を生み出します。ソロは「Just You, Just Me」の和声上を進むため、ビバップ〜ハードバップ語彙で組み立てやすい一方、コンピングはモンクらしく空間を活かした刺すような和音配置が似合います。テンポはミディアムからアップテンポまで幅広く、アンサンブルではドラムがリズムの隙間を活かし、ピアノと呼応する対話的なアプローチが効果的です。

歴史的背景

Evidenceは、既存のスタンダード進行に新たな主題を与えるコントラファクトという作曲手法を通じ、モンクがビバップの文脈に独自の論理とユーモアを刻印した例です。タイトルは「Just Us(Just You, Just Meのもじり)→Justice→Evidence」という言葉遊びに由来する解釈が広まり、モンクの機知を象徴する逸話として親しまれています。出版年や初出の詳細は情報不明ですが、戦後モダン・ジャズの発展期におけるモンク作品群の中核をなす一曲として定着しました。

有名な演奏・録音

モンク自身の複数の録音に加え、1957年カーネギー・ホールでのジョン・コルトレーンとの共演音源(後年リリース)に「Evidence」が収録され、鋭いインタープレイで評価されています。ソプラノサックスのスティーヴ・レイシーはアルバム『Evidence』で本曲を表題曲として取り上げ、モンク作品研究の礎を築きました。モンク四重奏団のレパートリーとしても頻出し、ジャム・セッションや音楽教育の現場でも定番曲として扱われています。その他の著名録音の網羅的リストは情報不明ですが、世代や編成を超えて幅広く演奏され続けています。

現代における評価と影響

Evidenceは、シンプルな32小節形式に高度なリズム操作と間合いの美学を凝縮した教材的名曲として評価されています。ソロイストにはビバップ語彙の整理とリズムの前後感の鍛錬を、リズム隊には間の取り方と対話的コンピングを要求するため、学習・研究の対象として頻繁に取り上げられます。今日でもライブのハイライトとして機能し、モンク解釈の成熟度を示すリトマス紙のような位置づけを保っています。

まとめ

Evidenceは、既存進行の上にモンク流のリズム的ひねりと機知を重ねた、モダン・ジャズを象徴する一曲です。明快な形式と難解さが同居する設計により、世代を超えて演奏者の創造性を刺激し続けています。初出年など一部は情報不明ながら、歴史的価値と実践的意義は揺るぎません。