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早春賦

  • 作曲: 中田 章
#トラディショナル
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早春賦 - 楽譜サンプル

早春賦|歌詞の意味と歴史

基本情報

「早春賦」は、中田章が作曲し、吉丸一昌が作詞した日本の唱歌。大正期に生まれ、学校教育を通じて全国に広まったことで定番曲となった。穏やかな旋律と明晰な言葉のリズムにより、独唱・合唱・器楽編曲など多彩な形で親しまれている。季節感の喚起力が高く、早春の行事や音楽学習のレパートリーとして定着。今日では日本の春を象徴する歌の一つとして広く認知され、世代を超えて歌い継がれている。

歌詞のテーマと意味

テーマは、暦の上では春でありながらも寒さが残る“端境期”の感覚と、やがて訪れる本格的な春を待ち望む心情。自然描写と季節語が丁寧に織り込まれ、希望と忍耐、移ろいへの感受性が端正な言葉で表現される。喜びを高らかに歌い上げるのではなく、抑制された情緒で期待を積み重ねる語り口が特徴。景色の細やかな観察と内面の動きが響き合い、聴き手に“待つ”美徳を想起させる。結果として、春を迎える儀礼的時間にふさわしい歌となっている。

歴史的背景

近代日本の音楽教育が整備され、西洋和声と日本語の韻律を折衷した唱歌が多数作られた時代に誕生。学校教材としてのわかりやすさと芸術性の両立を目指した作例で、季節の歌として普及した。信州・安曇野には歌碑が建てられ、ゆかりの地として知られるなど地域文化との結びつきも深い。大正ロマンの空気を背景に、自然観と近代的感性が交差する作品として位置づけられ、後の日本歌曲や合唱曲のレパートリー形成にも影響を与えた。

有名な演奏・映画での使用

独唱版(声楽とピアノ)に加え、混声・女声・児童合唱など多様な編成で録音・演奏が行われている。器楽では弦楽合奏や吹奏楽、リコーダーや二重唱など教育現場向けの編曲も豊富だ。放送番組や演奏会のアンコールで取り上げられる機会も多い。映画・ドラマでの使用は例があるものの、特定の作品名や公開年の網羅的情報は情報不明。いずれにせよ、合唱分野での定着がとりわけ顕著である。

現代における評価と影響

卒業や入学の季節、地域の春まつり、合唱祭などでの定番曲として高い人気を保つ。旋律は歌いやすく、音域も無理がないため、初等・中等教育の教材として重用される。発声やフレージング、言葉の明瞭度を学ぶ教材としても適しており、音楽科のみならず国語教育との連携にも向く。多数の新編曲・再録音が継続的に生まれ、世代交代の中でもレパートリーが更新されている点は、この歌の普遍性と季節文化への根付きの深さを示している。

まとめ

「早春賦」は、名匠の旋律と端正な詩が結びつき、日本の早春の情感を静かに描き出した唱歌の名作である。教育現場と演奏会の双方で息長く愛され、時代を超えて春を告げる歌として受容されてきた。自然への眼差しと希望の緊張を湛える表現は、現代の聴き手にも鮮やかに届く。定番でありながら、演奏解釈や編曲によって新たな魅力を開く余地を多分に残す、奥行きある一曲と言える。