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Evermore (美女と野獣)
- 作曲: MENKEN ALAN

Evermore (美女と野獣) - 楽譜サンプル
Evermore (美女と野獣)|作品の特徴と歴史
基本情報
「Evermore」は、2017年公開のディズニー実写映画『美女と野獣』のためにアラン・メンケンが作曲、ティム・ライスが作詞した新曲。劇中では野獣が歌うバラードで、オリジナル英語版は俳優デン・スティーヴンスが担当。日本語吹替版では「ひそかな夢」の題で歌唱され、エンドクレジットではジョシュ・グローバンによる別バージョンが流れる。サウンドトラックにも収録され、映画の物語を補強する重要曲として位置付けられている。
音楽的特徴と表現
旋律は低音域からゆるやかに上昇し、終盤にかけてダイナミクスを拡げる典型的なメンケン流バラード。憧憬を示す上行フレーズと、諦念を含む下降回帰が交錯し、野獣の内面の揺らぎを描く。厚いストリングスとホルン、ハープが中心のオーケストレーションは、城の荘厳さと孤独を同時に暗示。主題動機の断片が間奏に織り込まれ、作品全体の音楽語法と有機的に結び付く。歌唱はバリトン寄りの音域で、言葉の韻と母音が長く保たれる箇所が感情の余韻を強めている。
歴史的背景
1991年のアニメ版『美女と野獣』には野獣の本格的なソロはなく、のちの舞台版(1994)で「If I Can’t Love Her」が追加された。実写映画では映画的時間進行に合う新曲が求められ、メンケンとライスが物語の転機に置く楽曲として「Evermore」を創作。ベルを思い、自己犠牲と変容を自覚する瞬間を音楽で定義することで、キャラクターの心理線が明確化され、以降の再会とエンディングへの感情的導線が強化された。
使用された映画・舞台(該当時)
本曲は2017年の実写映画『美女と野獣』で初使用。ベルを自由にする決断の直後、城の高所で独白的に歌われる場面に配置される。劇中版とエンドクレジット版で編曲とキーが異なり、後者はよりポップス寄りのバラードとして仕立てられている。舞台版・コンサートでの恒常的な採用状況や、他作品での正式な使用については情報不明。
現代における評価と影響
公開後、映画音楽ファンやボーカリストによるカバーやアレンジが多数生まれ、動画配信やコンサートで披露例が見られる。野獣の内面に焦点を当てた新曲として、1991年版の楽曲群と並び立つ存在感を獲得。同系統のメンケン作品にみられる旋律・和声言語を継承しつつ、映画のための叙情とスケール感を更新した点がしばしば言及される。教育・分析の題材としても扱われることがある。
まとめ
「Evermore」は、メンケンとライスが実写版に付与した感情の核であり、野獣の変容を決定づける劇的装置として機能する。堂々たる旋律、重厚なオーケストレーション、物語との密接な結び付きが相まって、映画体験を深化させた。『美女と野獣』の普遍的テーマを現代の観客に届かせた一曲として、今後も長く参照されるだろう。