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Everything Happens To Me
- 作曲: DENNIS MATT

Everything Happens To Me - 楽譜サンプル
Everything Happens To Me|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Everything Happens To Me」は、作曲家Matt Dennis(入力表記:DENNIS MATT)と作詞家Tom Adairによる1940年の楽曲。翌年、トミー・ドーシー楽団のフランク・シナトラの歌唱で広く知られるようになり、以後ジャズ・スタンダードとして定着した。32小節のAABA形式のバラードとして演奏されることが多く、抒情的で品位あるメロディが特徴。恋愛や日常の不運を自嘲気味に綴る歌詞は、寂寥とウィットを併せ持ち、世代を超えて共感を呼んでいる。
音楽的特徴と演奏スタイル
半音階的な進行と副次ドミナントを要所に配した和声が、主人公の冴えない運命を嘆く情感を支える。メロディは跳躍と順次進行の対比が巧みで、終止に向けて繊細な解決感を作る。実演ではスロー〜ミディアムのテンポ、豊かなレガートと間合い、時に自由律的イントロや間奏を用いるのが定番。アドリブでは内声のクロマチックや裏コードを織り交ぜ、過度に派手にせず“語り口”を重んじる解釈が好まれる。ヴォーカルは歌詞のウィットを活かし、器楽は歌心を模したフレージングで魅せるのがポイントだ。
歴史的背景
第二次世界大戦前後のポピュラー・ソング黄金期に生まれ、シナトラの初期代表曲の一つとして人々の心に刻まれた。作曲者Dennisは「Angel Eyes」「Let's Get Away from It All」などでも知られ、洗練されたバラード作法を確立。クラブやラジオでの普及を経て、ビバップ以降の器楽奏者にも継承され、メロディと和声の懐の深さが即興家に愛されてきた。自嘲的ユーモアと孤独感という主題は、戦時から戦後の気分とも響き合い、長期にわたりスタンダードとして生き続けている。
有名な演奏・録音
出発点として、トミー・ドーシー楽団をバックにしたフランク・シナトラの1941年録音が挙げられる。器楽ではCharlie Parker with Stringsによる上品な弦楽アレンジ版が名高く、バラードの理想形として引用されることが多い。ヴォーカルではChet Bakerの繊細な解釈も広く支持を集める。ほか、多数のピアニストやサクソフォニストがレパートリーに加え、夜のセットでしっとりと配される“必修曲”として定着している。
現代における評価と影響
今日でもリアルブックに掲載され、音大・ジャズスクールの教材、セッションの常連曲として親しまれる。歌詞は不運を列挙しつつも淡いユーモアで受け止め、重苦しさに傾きすぎない点が現代のリスナーにも適合。録音技術の進化に伴い、親密なマイクワークやミニマルな編成での解釈が増え、ヴォーカル/器楽の両面で新しい読み替えが続く。配信時代にも再演が絶えず、カタログ価値が高い一曲だ。
まとめ
哀感とウィット、シンプルさと和声の豊かさを併せ持つ本曲は、バラード解釈の教科書的存在である。初学者はAABAの構造と主要進行を押さえ、中級者は内声処理と間合いを磨くと良い。原点としてシナトラ、器楽の王道としてParkerを聴き、自身のテンポと音色で物語を紡いでいこう。