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Strasbourg-St.Denis

  • 作曲: HARGROVE ROY
#スタンダードジャズ
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Strasbourg-St.Denis - 楽譜サンプル

Strasbourg-St.Denis|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Strasbourg-St.Denisは、トランペッターのロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)が作曲したインストゥルメンタル曲。初出は2008年にリリースされたロイ・ハーグローヴ・クインテットのアルバム『Earfood』で、以後ジャズ・クラブやセッションで広く演奏される定番曲となった。タイトルはパリのメトロ駅名「Strasbourg–Saint-Denis」に由来し、ハーグローヴの欧州ツアーでの経験とも結び付けて語られることが多い。歌詞は存在せず、メロディと即興演奏が中心の楽曲である。

音楽的特徴と演奏スタイル

耳に残る短いリフと力強いグルーヴが核となり、シンプルな進行上でソロが発展していく構成が特徴。テーマはコール&レスポンス的なフレーズ運びで、トランペットとサックスのユニゾン/ハーモニーが映える。ビートはスウィングとファンクの中間的手触りを持ち、リズムセクションはタイトなバックビート感で推進力を生む。構造が明快なためソロイストはフレージングやダイナミクスで個性を打ち出しやすく、アンサンブルはテーマの反復とブレイクを巧みに織り交ぜ緊張と解放を作る。テンポやキーの定型は情報不明だが、現場ごとに柔軟に解釈される点も魅力である。

歴史的背景

2000年代のハーグローヴは、アコースティック・クインテットとR&B/ヒップホップ寄りのプロジェクトを両立させ、伝統と現代性の架橋を進めた。Strasbourg-St.Denisはその文脈で生まれ、ハードバップの語法にアーバンなフィールを融合した象徴的レパートリーとなった。『Earfood』は彼の円熟期の代表作として受け止められ、本曲は同アルバムを牽引するキートラックとして拡散。タイトルが示す通り欧州との縁も話題を呼び、国際的なクラブ・シーンでの浸透を後押しした。

有名な演奏・録音

基準となる音源はロイ・ハーグローヴ・クインテット『Earfood』(2008年)収録ヴァージョン。以降、ハーグローヴ自身のライブで頻繁に取り上げられ、クラブ録音や映像でも繰り返し演奏された。現在は小編成のコンボがレパートリーに加えることが多く、音楽大学の発表会やジャム・セッションの定番曲として定着。著名プレイヤーによるカバーやライブ映像がオンラインで多数公開され、テーマのフックとソロの自由度が異なる解釈を生み続けている。具体的な映画等での使用情報は情報不明。

現代における評価と影響

本曲は“モダン・ジャズのスタンダード化”を代表する一例として評価されている。難解なコード進行に依存せず、リズムとリフで高揚感を生む設計は、現代のライブ現場に適合。若手からベテランまで幅広い奏者が取り上げ、即興教育の素材としても有用視される。配信時代においては、短いテーマのわかりやすさがリスナーの入口となり、アルバム全体への導線にも機能。ハーグローヴの美学—伝統、ソウル、都会的洗練—を凝縮した名曲として、今後も演奏機会は減らないだろう。

まとめ

Strasbourg-St.Denisは、ロイ・ハーグローヴが提示した“グルーヴするハードバップ”の到達点。強力なリフとシンプルな枠組みが即興の自由を支え、世代と国境を越えて演奏され続ける理由となっている。初めて聴くなら『Earfood』版が基準。そこから各アーティストのライブ解釈を聴き比べれば、本曲の普遍性と拡張性がいっそう鮮明に浮かび上がる。