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Trust in Me (ジャングルブック)
- 作曲: SHERMAN RICHARD M, SHERMAN ROBERT B

Trust in Me (ジャングルブック) - 楽譜サンプル
Trust in Me (ジャングルブック)|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Trust in Me」は、ディズニー長編アニメーション『ジャングル・ブック』(1967年)でヘビのカ(Kaa)が歌う劇中歌。作曲・作詞はシャーマン兄弟(リチャード・M・シャーマン/ロバート・B・シャーマン)。原題は“Trust in Me (The Python’s Song)”。オリジナルの歌唱はカの声優スターリング・ホロウェイで、穏やかな子守歌調と囁くようなボーカルが特徴。モーグリに催眠をかける場面で使われ、物語のサスペンスを静かに高める役割を担う。
歌詞のテーマと意味
歌詞は「信じて」という言葉を執拗に繰り返し、安心を装いながら相手の警戒心を解く欺瞞の技巧を描く。優しく滑らかな旋律と静謐な伴奏は、危険を覆い隠す心地よさとして機能し、言葉と音楽のコントラストで誘惑と支配の構図を浮かび上がらせる。S音が多いフレーズやレガートなラインは蛇のイメージを強化し、信頼という語の裏に潜む捕食者の本性を際立たせる。全文引用は避けるが、反復と囁きが核心的な装置である。
歴史的背景
『ジャングル・ブック』の音楽は、物語を明るく親しみやすい方向へ導くというウォルト・ディズニーの方針のもと、シャーマン兄弟が中心となって制作された。その中で「Trust in Me」は、カの狡猾さを過剰な恐怖ではなくユーモラスかつ陰影ある歌として描く設計がなされている。なお、この曲は未使用曲「The Land of Sand」(『メリー・ポピンズ』のために書かれたとされる)から発想を転用した経緯が広く伝えられており、子守歌的語法がその源流を示す。公開年は1967年。
有名な演奏・映画での使用
1967年版では、カがモーグリに近づく二つの場面で印象的に用いられる。後年の実写映画『ジャングル・ブック』(2016年)では、カ役のスカーレット・ヨハンソンが歌唱し、エンドクレジットに収録されて再評価を獲得。サウンドトラックにも収められ、現代的なプロダクションで原曲の妖しさを継承した。ディズニー関連の公式コンサートやカバーも多数存在するが、網羅的な一覧は情報不明。
現代における評価と影響
「Trust in Me」は、いわゆる“ヴィラン・ソング”の典型としてしばしば言及される。派手さよりも心理的操作を描く手法は、映像と音の連携の好例として研究・批評の対象となり、ディズニー楽曲の多面性を示す存在だ。配信時代においても、落ち着いたテンポと妖艶なムードはプレイリストで独自の需要を保ち、リメイクや編曲を通じて新たな聴衆に届き続けている。
まとめ
「Trust in Me」は、甘美な音の表層と裏腹に、信頼を装う誘惑と支配を描く心理的な歌。シャーマン兄弟の職人技が活きる一曲であり、1967年の初出から2016年版まで、映像文脈の変化とともに意味を更新してきた。映画の物語性を音楽で補強する、ディズニー楽曲の真骨頂を体現している。