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Little Girl Blue

  • 作曲: RODGERS RICHARD
#洋楽ポップス#カーペンターズ
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Little Girl Blue - 楽譜サンプル

Little Girl Blue|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Little Girl Blue は、作曲家Richard Rodgersと作詞家Lorenz Hartの名コンビによる楽曲。1935年のブロードウェイ・ミュージカル『Jumbo』で初披露され、のちにポピュラー/ジャズのレパートリーへ広がった。メランコリックな歌詞世界と端正な旋律が結びつき、歌手・器楽奏者ともに取り上げる定番曲となっている。舞台発のショー・チューンでありながら、録音史の中でジャズ・スタンダードとして確かな地位を築いた、20世紀アメリカ歌曲の代表例である。

音楽的特徴と演奏スタイル

しっとりとしたバラードテンポで演奏されることが多く、内省的なメロディが印象的。32小節AABA型の歌形式として扱われることが一般的で、滑らかな進行と余韻を活かしたフレージングが要となる。ヴォーカルは語り口のニュアンスを重んじ、器楽ではリハーモナイズやルバート導入で表情を拡張するアプローチが定番。ピアノ・トリオ編成や弦楽を加えたアレンジでも映え、シンプルな骨格ゆえに解釈の幅が広い。

歴史的背景

1930年代のブロードウェイは、ロジャース&ハートが躍進した時代であり、『Jumbo』はその創作期を代表する作品群の一つ。華やかなショーの中に、孤独や憂いを湛えたバラードを織り込む手法は当時のミュージカルの美学と一致し、後年のスタンダード化に資した。舞台を離れても歌の生命力は失われず、戦後のジャズ黄金期にレコーディングを通じて普及、世代やジャンルを超えて受け継がれていった。

有名な演奏・録音

最もよく知られる録音の一つが、Nina Simoneのデビュー作『Little Girl Blue』(1958)。端正な歌唱とピアノの独創的伴奏が曲の陰影を鮮やかに示した。Ella Fitzgeraldは『Rodgers & Hart Song Book』(1956)で、流麗なフレージングと明晰な発音で名演を残す。Chet Bakerはバラードの美学を体現する柔らかなトーンで録音し、抒情性を前面に押し出した。また、Oscar PetersonのRodgers & Hart作品集でも取り上げられ、器楽的アプローチの豊かさを示している。

現代における評価と影響

本曲はヴォーカリストの表現力を測る“語りのバラード”として教育現場やオーディション・レパートリーでも定番。ハーモニーの再解釈やテンポの伸縮に耐える構造が、現代ジャズの自由度と親和し、ライブでも選曲され続ける。配信時代においても名盤録音からのリスニング導線が機能し、新たなリスナーを獲得。ショー・チューンとジャズの架け橋として、作曲家ロジャースのメロディ・クラフトとハートの詞世界の普遍性を証明し続けている。

まとめ

Little Girl Blueは、『Jumbo』発のショー・チューンからジャズ・スタンダードへと定着した稀有な楽曲。シンプルで柔らかな骨格が多様な解釈を可能にし、時代とともに新しい名演を生む。初演から今日に至るまで、陰影あるメロディと語りの力で聴き手の心に寄り添う、20世紀アメリカ歌曲の永遠の定番である。