Four
- 作曲: DAVIS MILES

Four - 楽譜サンプル
Four|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Four」はマイルス・デイヴィス作曲のジャズ・スタンダード。初期の代表的な演奏は1954年録音(アルバム「Blue Haze」に収録)で、以後、彼のレパートリーとして長く演奏されました。形式は32小節のAABA。テンポは中速から速めのスウィングが主流で、セッションでも頻出。歌詞についてはジョン・ヘンドリックスによるヴォカリーズ版が知られ、器楽曲ながらヴォーカルでも取り上げられます。調性は演奏者により異なるため情報不明とします。作曲者表記には異説があり、Eddie “Cleanhead” Vinson名義で登録された資料も存在しますが、本稿では一般的なクレジットに従います。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律はシンプルなモチーフを骨格に、跳躍と順次進行を織り交ぜた明快なラインが特徴。Aセクションは動機の反復と展開で推進力を生み、Bセクション(ブリッジ)で和声的な緊張感を高めて帰結します。コード進行はII–V連鎖を軸にした機能和声で、アドリブはビバップ~ハードバップ語彙(8分音符のライン、アプローチ・ノート、ガイドトーンの滑走)がよく映えます。リズムは4ビートが基本ながら、ドラマーのライド・パターンの変化やピアノのコンピングで推進力を調整しやすく、テンポアップにも耐える設計。シンプルな主題ゆえに、各奏者のフレージングと音色の個性が前面に出やすいナンバーです。
歴史的背景
1950年代半ば、マイルス・デイヴィスはクール・ジャズ以降の語法を発展させ、ハードバップの文脈で小編成コンボの表現を洗練させました。「Four」はその文脈で生まれ、クインテット編成での機動力と即興の自由度を両立させる曲として定着。作曲者名義については、後年Eddie Vinsonへの帰属を示す資料もあり、クレジットの変遷が議論されてきました。いずれにせよ、1950年代のニューヨークのクラブ・シーンで磨かれ、ライブの現場を通じて“スタンダード化”していった典型例といえます。
有名な演奏・録音
初期の基準点として1954年録音(「Blue Haze」収録)が挙げられます。続いて1956年の「Workin’ with the Miles Davis Quintet」では、ジョン・コルトレーンらを擁する第一期クインテットにより、端正かつ躍動的なバージョンが確立。さらに1964年のライヴ盤「Four & More」では、テンポを大幅に上げた緊張感の高い名演が記録され、楽曲のポテンシャルを決定づけました。ヴォーカル面ではジョン・ヘンドリックスによるヴォカリーズ版が知られ、多くの歌手・バンドに受け継がれています。
現代における評価と影響
「Four」はアドリブ基礎力を測る定番として教育現場やジャム・セッションで広く用いられ、フォーム運用・ガイドトーンの把握・テンポ耐性を同時に鍛えられる教材曲として高く評価されています。録音史上の複数の基準演奏が存在するため、学習者はテンポやアーティキュレーションの解釈を比較検討しやすく、プロ奏者にとってもライブでの“勝負曲”として機能。簡潔な主題と汎用的な進行は、現代のコンテンポラリーな語法とも親和性が高く、今もレパートリーの中心に位置づけられています。
まとめ
AABAの明快な設計、ビバップ語法に適した進行、テンポ可変の柔軟性を併せ持つ「Four」は、時代と編成を超えて演奏され続けるスタンダードです。1954年以降の名録音群が演奏解釈の参照点を提供し、ヴォカリーズ版の存在が曲の裾野を広げました。作曲者クレジットに関する異説はあるものの、作品自体の価値は揺るがず、学習から実演まで幅広い現場で活躍し続けています。