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I Can Dream Can't I
- 作曲: FAIN SAMMY

I Can Dream Can't I - 楽譜サンプル
I Can Dream Can't I |楽曲の特徴と歴史
基本情報
I Can Dream Can't I は、作曲家Sammy Fainによる楽曲で、作詞はIrving Kahal。発表年は1937年とされ、アメリカのポピュラー音楽黄金期に生まれたバラードです。もともとの初出媒体(映画・舞台など)は情報不明ですが、その後多くの歌手・ジャズ奏者に取り上げられ、いわゆる“Great American Songbook”系のスタンダードとして定着しました。タイトルが示す通り、叶わない恋や手の届かない想いを「せめて夢の中で」と慈しむニュアンスを含み、歌詞は内省的で切ない情緒を伝えます。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的な32小節AABA形式のスロー~ミディアム・バラードとして演奏されることが多く、甘美な旋律線と、二次ドミナントや半音階的な進行を含む和声が特徴です。メロディは語り口に寄り添うように抑揚を持ち、間(ま)の取り方やレガートの美しさが表現の鍵となります。ジャズではボーカルが中心ながら、テナーサックスやトランペットによる抒情的なバラード・フィーチャーとしても機能。テンポは遅めに設定し、リズムは4ビートの軽いスウィング、あるいはルバートを織り交ぜ、歌詞の切なさを際立たせる解釈が好まれます。
歴史的背景
1930年代後半はブロードウェイや映画音楽を源流とするポピュラー歌曲が豊作で、作曲家と作詞家のコンビが量産した名曲がのちにジャズ界で再評価されました。本曲もその流れに位置づけられ、戦前から戦後にかけてのバラード・レパートリーとして浸透。第二次世界大戦後、ロマンティックな叙情を湛えたバラードは広く支持を集め、ダンスホールやラジオで親しまれました。なお、初演者や初出舞台については情報不明です。
有名な演奏・録音
本曲は多くの歌手・バンドに録音され、戦後には女性ボーカル・グループによるヒット版が広く知られる存在となりました。とりわけThe Andrews Sistersの録音は代表例として言及されることが多く、以降もジャズ歌手やビッグバンド、スモール・コンボがレパートリーに採用。インストゥルメンタルでは、テナーサックスやフリューゲルホーンなどの柔らかな音色でのバラード・アレンジが定番で、ピアノ・トリオによる繊細な伴奏と相性が良いことでも知られます。
現代における評価と影響
I Can Dream Can't I は、失恋や片思いを静かに見つめる情緒と、歌いやすくも奥行きのあるメロディによって、現在もジャズ・ボーカルの教材やリサイタルで選ばれる定番曲です。演奏者にとっては、ダイナミクスのコントロール、フレージング、間合いの美学を鍛える格好の素材であり、聴き手には時代を超えるロマンティシズムを伝えます。配信時代においても、プレイリストのムード・キュレーションに適した楽曲として再発見が進み、スタンダード曲の入口としての役割も果たしています。
まとめ
Sammy FainとIrving Kahalが生んだI Can Dream Can't I は、1930年代発の珠玉のバラードであり、歌詞の哀感と洗練された和声が魅力です。名歌手たちの録音を通じスタンダードとして受け継がれ、今日でも演奏実践と鑑賞の双方で価値を持ち続けています。初出に関する詳細は情報不明ながら、楽曲そのものの完成度が、時代を超えて愛される理由を物語っています。