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Milestones

  • 作曲: DAVIS MILES
#スタンダードジャズ
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Milestones - 楽譜サンプル

Milestones|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Milestones」はマイルス・デイヴィス(DAVIS MILES)作曲のインストゥルメンタルで、1958年に初録音され、同年のアルバム『Milestones』に収録されたジャズ・スタンダード。歌詞は存在せず、主旋律と即興によって構成される。タイトルが同じ1947年の別曲(作者帰属に異説あり)と混同されがちだが、本記事は1958年のモード志向の楽曲を扱う。セクステット期の代表作として広く演奏され、ジャム・セッションや音楽教育の現場でも定番となっている。

音楽的特徴と演奏スタイル

最大の特徴は、機能和声の連続よりもモードの滞留を軸に据える設計で、和声変化を抑えた上で音色・リズム・フレージングの自由度を高めている点にある。ヘッドは管楽器のユニゾン(またはシンプルなハーモニー)でタイトに提示され、ソロはドリアン系のモードを中心に、音価の間合いと動機の反復で推進力を生む。リズム・セクションはペダルや持続的なグルーヴでスペースを確保し、ドラマーはライドの推進とシンコペーションでダイナミクスを構築。テンポは中速〜速めで演奏されることが多いが、モード設計ゆえにテンポ変化や尺の伸縮にも柔軟に対応できる。

歴史的背景

1950年代後半、ハード・バップが成熟する一方で、より少ないコード進行で音階的思考を深めるモード・ジャズが台頭。「Milestones」はその転換点を明確化した楽曲として位置づけられる。ジョン・コルトレーンやキャノンボール・アダレイを擁するマイルス・デイヴィス・セクステットが、ソロの言語とアンサンブルの呼吸を再定義した成果であり、翌年の『Kind of Blue』へ通じる重要なステップとなった。

有名な演奏・録音

基準となるのは1958年のスタジオ録音で、端正なヘッド提示と長めのソロ空間が作品の設計思想を示す。以後、マイルスのライヴでもしばしば取り上げられ、編成やテンポ、ソロの構築法が時期により多様に変容した。多くのジャズ奏者がレパートリー化し、実用譜集(いわゆるリアルブック系)にも収載。音大の実技試験やワークショップでも頻繁に採用されるなど、演奏・学習双方で定着している。

現代における評価と影響

「Milestones」はモード即興の入り口として世界的に参照され続け、フレーズ語彙の発展やフォーム運用の自由度を学ぶ教材として評価が高い。録音技術や配信環境の進化により、歴史的音源の聴取と最新の解釈の比較も容易になり、スタイル研究の格好の題材となっている。ジャム・セッションでの共通言語としても機能し、世代や地域を超えた演奏の共有を促している。

まとめ

1958年の「Milestones」は、コード進行中心からモード思考へと舵を切ったジャズの転換点を象徴する一曲である。簡素化された和声設計は、音色・リズム・動機展開の創造性を際立たせ、今日までスタンダードとして生き続ける力をもたらした。なお、1947年の同名曲とは別作品である点に留意したい。インストゥルメンタルゆえに歌詞はなく、演奏者の解釈がそのまま物語となる。