The Night Has A Thousand Eyes
- 作曲: BRAININ JEROME

The Night Has A Thousand Eyes - 楽譜サンプル
The Night Has A Thousand Eyes|楽曲の特徴と歴史
基本情報
The Night Has A Thousand Eyesは、作曲Jerome(Jerry) Brainin、作詞Buddy Bernierによるジャズ・スタンダード。1948年公開の映画Night Has a Thousand Eyes(原題同名)のために書かれ、その後ジャズ・シーンで広く演奏されるようになった。なお、1962年にBobby Veeがヒットさせた同名のポップ・ソング(作曲者は別)は別作品であり、本曲とは無関係である。歌詞は存在するが、インストゥルメンタルで演奏される機会も非常に多い。
音楽的特徴と演奏スタイル
陰影あるメロディーラインと、流動的な和声進行が魅力。中速域での演奏が定番で、アドリブではコードの推移に沿って旋法的な展開やガイドトーンを生かしたフレージングが映える。実演では、Aセクションをラテン・フィール、ブリッジ(B)をスウィングに切り替えるアレンジが広く用いられ、リズム面のコントラストが楽曲のドラマ性を高める。メロディーの休符配置と持続音が生む「間」も重要で、ダイナミクスの付け方で印象が大きく変わる。ヴォーカルの場合は、夜の神秘性や観察者としての視線を想起させるテキストが音楽のムードと呼応する。
歴史的背景
本曲はパラマウント映画Night Has a Thousand Eyes(1948年)に端を発し、公開後にジャズ・ミュージシャンのレパートリーへ定着した。映画の文脈で生まれながら、スクリーンを離れて独自にスタンダード化した点が特徴で、1950年代後半から1960年代にかけてセッション現場で頻繁に取り上げられるようになった。映画における初出以外の詳細資料や当時のオリジナル音源の流通状況は情報不明だが、楽曲自体はクラブやラジオを通じて浸透していったとされる。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、John Coltraneによる演奏(アルバムColtrane's Soundに収録)が広く知られる。端正なテーマ提示と緊張感あるソロ構築は、後続の解釈に大きな影響を与えた。また、サックスやピアノ、ギターの各器楽編成で数多く録音が残され、ヴォーカル版も複数存在する。映画版に直接紐づく商業録音の詳細は情報不明だが、ジャズ・シーンではクラブ・ライヴや教育現場の発表でも定番レパートリーとなっている。
現代における評価と影響
現在もジャム・セッションや音大・専門学校のカリキュラムで扱われる重要曲。リズム・フィールの切替や転換感のある和声を学ぶ教材として有用で、アレンジの自由度も高い。リードシート集や教則本での掲載も一般的で、初中級から上級まで段階的に取り組める曲として位置付けられている。同名異曲との取り違えに注意しつつ、映画発の楽曲が普遍的なジャズ表現の媒体へと昇華した好例として評価が定着している。
まとめ
The Night Has A Thousand Eyesは、映画由来ながらジャズの現場で磨かれたスタンダード。奥行きある旋律と柔軟なリズム運用が、インストからヴォーカルまで幅広い解釈を可能にする。名演を手がかりに、自身のアレンジでラテンとスウィングの対比や和声の推進力をどう描くかが聴きどころ・弾きどころとなる。