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'Round Midnight

  • 作曲: HANIGHEN BERNARD D, MONK THELONIOUS S, WILLIAMS CHARLES COOTIE
#スタンダードジャズ
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'Round Midnight - 楽譜サンプル

’Round Midnight|楽曲の特徴と歴史

基本情報

’Round Midnight(しばしば頭にアポストロフィを付す)は、セロニアス・モンク作のジャズ・バラード。1944年にクーティ・ウィリアムス楽団が初録音し、クレジットにウィリアムスとバーナード・D・ハニガンが加わった。後年、ハニガンの歌詞が付与され、器楽・歌唱の双方で演奏される。形式は32小節AABAで、モンク作品の中でも最も広く親しまれるスタンダードの一つである。

音楽的特徴と演奏スタイル

短調を基調とし、半音階的進行やオルタードを多用した和声が特徴。内声の半音下降、サブドミナント・マイナーの扱い、トライトーンを含むテンション配置が、深い陰影と緊張を生む。しばしば変ホ短調で演奏され、テンポはスローなバラードが標準。ディジー・ガレスピーによる有名なイントロと間奏(多くの版で定着)が導入されることが多い。管楽器は息の長いレガートとダイナミクス、ピアノは空間を活かす分散和音やクローズド・ボイシングが要点。歌唱ではハニガンの詞に寄り添い、ルバートの序奏から入る解釈もしばしば見られる。

歴史的背景

モンクが1940年代前半に書いた楽曲で、当時のビバップ語法を端的に示しつつ、叙情的旋律で広く受け入れられた。初期の出版・録音では商慣習上の理由から共同クレジットが付与され、のちに歌詞版が普及。1955年のニューポート・ジャズ・フェスティバルでのマイルス・デイヴィスの名演は、曲の知名度をさらに高めたとされる。以降、器楽・ボーカルの両面で定番曲として定着した。

有名な演奏・録音

セロニアス・モンク自身のソロ/コンボ録音は本曲解釈の基準点。マイルス・デイヴィスはコロンビア移籍後のアルバム『’Round About Midnight』(1957)で決定的名演を残した。ディジー・ガレスピーのイントロを取り入れた版は多くの演奏者に継承されている。ボーカルではサラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、カーメン・マクレエらがハニガンの歌詞版で個性を示した。さらに、映画『ラウンド・ミッドナイト』(1986)でも象徴的に取り上げられ、多くのリスナーに再発見された。

現代における評価と影響

今日でもジャム・セッションや音楽教育の場で頻繁に扱われ、リハーモナイズ、イントロ/エンディング処理、テンポ運用の研究素材として重要視される。ピアニスト、ホーン奏者、歌手のいずれにとっても表現力と音楽的成熟を試すレパートリーであり、多くのスタンダード集に収録される定番曲である。録音・配信の時代においても新解釈が次々に提示され、スタンダードとしての生命力を保ち続けている。

まとめ

深夜の静けさを思わせる陰影と、ビバップの知的語法が共存する稀有なバラード。編成や世代を超えて演奏され、演奏者の解釈が色濃く反映されるため、聴くたびに新鮮な魅力が立ち上がる。’Round Midnightは、ジャズの核心に触れるための必修曲と言える。