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Englishman In New York
- 作曲: SUMNER GORDON MATTHEW

Englishman In New York - 楽譜サンプル
Englishman In New York|歌詞の意味と歴史
基本情報
Englishman In New Yorkは、SUMNER GORDON MATTHEW(Sting)による楽曲で、1987年のアルバム『...Nothing Like the Sun』に収録され、のちにシングルとしても発表された。作詞・作曲はいずれも本人。軽快なポップにジャズのエッセンスを織り交ぜ、ブランフォード・マルサリスのソプラノサックスが印象的に響く。録音にはケニー・カークランド(キーボード)やマヌ・カッチェ(ドラムス)ら、当時のStingバンドの中核が参加し、洗練された都会的サウンドを形成している。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“Englishman”は、ニューヨークで暮らす英国人としての視点を示し、異文化の中で自分の作法やアイデンティティを保つ姿勢が描かれる。着想源は、英国出身でニューヨークに移住した作家クエンティン・クリスプ。彼の気品やウィット、少数者として生きる勇気に敬意を表し、他者と違っても自分らしさを貫くメッセージを放つ。礼節や品位をユーモアを交えて語ることで、説教臭さを避けつつ、個の尊重と多様性の受容を促している。
歴史的背景
1980年代後半のニューヨークは多文化が交錯し、同時に社会的緊張も抱えていた時代。英国から世界的ソロアーティストへと転身したStingは、都会の匿名性と自由、そして少数者への偏見が同居する現実に鋭く反応した。クリスプはその象徴的存在であり、彼との交流が楽曲の核となる視点を与えた。作品は、外見や出自の差異を“品位ある生き方”で乗り越えるという、人間的で普遍的な態度を提示する。
有名な演奏・映画での使用
本曲はStingのコンサートで長年の定番曲となり、アコースティック編成やビッグバンド風、シンフォニック編成など多様なアレンジで演奏されてきた。特にソプラノサックスのフレーズはライブの聴きどころで、各時代のメンバーが豊かな即興性を示している。後年にはリミックス版も発表され、クラブ文脈でも再注目を集めた。映画での使用については情報不明。
現代における評価と影響
Englishman In New Yorkは、国籍・性自認・生活様式などの違いを越えて自己を確立することを称える歌として広く親しまれている。教育現場やメディアで、多様性や包摂を語る文脈の例示として取り上げられることもある。音楽的には、ポップとジャズ語法の洗練された融合例として評価され、サックス奏者やジャズ/ポップのクロスオーバー系アーティストのレパートリーにもなっている。
まとめ
本曲は、エレガンスとユーモアで貫かれた“異邦人の品位”をテーマに、都会的サウンドで普遍的メッセージを伝える名作である。時代や場所を超えて響く自己肯定の姿勢は、今日の多文化社会においても鮮度を失わない。繰り返し演奏される理由は、メロディの親しみやすさと、聴く者それぞれの“自分らしさ”に寄り添う余白の大きさにあると言える。