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I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ)
- 作曲: STRONG BARRETT,WHITFIELD NORMAN JESSE

I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ) - 楽譜サンプル
I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ)|歌詞の意味と歴史
基本情報
『悲しいうわさ』は、ノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングがモータウンで書いたソウル・ナンバー。1967年にグラディス・ナイト&ザ・ピップス版が先行ヒットし、1968年のマーヴィン・ゲイ版が決定版として知られる。英題は I Heard It Through The Grapevine。いずれもモータウン傘下レーベルからのリリースで、同社の黄金期を象徴する代表曲となった。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“grapevine”は、口伝ての噂話を指す英語の比喩。語り手は恋人の裏切りをうわさで知り、動揺と不信、なお消えない愛情との板挟みに苦しむ。確証を求めながらも、噂が真実かもしれないという恐れが曲全体の緊張を生み、印象的なフックとコーラスがその心理を増幅。マーヴィン・ゲイ版は内省的でゴスペル的な嘆きを、グラディス版は毅然とした痛切さと推進力を強調している。
歴史的背景
1966年に制作され、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの録音が先行するも当初は未発表。プロデューサーのホイットフィールドは編曲を練り直し、テンポや質感の異なる複数バージョンを生み出した。1967年にグラディス版がチャート上位に進出し、翌1968年のマーヴィン・ゲイ版が全米1位を獲得。陰影あるストリングスと強靭なリズム、哀感漂うメロディは、モータウンサウンドの表現幅を拡張したと評される。
有名な演奏・映画での使用
代表的録音はマーヴィン・ゲイ、グラディス・ナイト&ザ・ピップスに加え、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルによる長尺でグルーヴィーなカバー(アルバム『Cosmo’s Factory』)が著名。映画『再会の時』(The Big Chill)ではオープニングを飾り、英国のLevi’s 501のテレビCMでも印象的に使用された。多様なメディアで再解釈され、世代やジャンルを超えて浸透している。
現代における評価と影響
本曲は数多の名曲リストに選ばれ、ソウル/R&Bのみならずロックやポップのアーティストにも広くカバーされ続けている。重層的なリズムとベースの推進力、ミニマルなコード運び、語り手の心理を凝縮するメロディは、後続の失恋ソングの語法に大きな影響を与えた。配信時代でも再生され続けることで、普遍的なテーマと強固なソングライティングの力が改めて証明されている。
まとめ
噂が真実を侵食する瞬間をとらえた『悲しいうわさ』は、作家コンビとモータウンの制作力が結晶した名曲。異なる解釈の複数ヴァージョンが並び立つ事実自体が、楽曲の懐の深さを示す。半世紀を経ても色褪せない共感と強度が、いまなお世界中のリスナーを惹きつけている。