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The Windmills Of Your Mind (風のささやき)
- 作曲: LEGRAND MICHEL JEAN

The Windmills Of Your Mind (風のささやき) - 楽譜サンプル
The Windmills Of Your Mind (風のささやき)|歌詞の意味と歴史
基本情報
作曲はミシェル・ルグラン(LEGRAND MICHEL JEAN)、作詞はアラン&マリリン・バーグマン。1968年公開の映画『華麗なる賭け(The Thomas Crown Affair)』の主題歌としてノエル・ハリソンが歌唱。翌年の第41回アカデミー賞で主題歌賞を受賞し、日本では「風のささやき」の邦題で広く知られる。詩と旋律の緊密な結びつき、映画の洗練された映像美と一体化した楽曲構成が特徴だ。
歌詞のテーマと意味
歌詞は円、渦、砂時計などの連鎖する比喩で構築され、記憶や時間、恋の余韻が心の中で回り続ける感覚を描く。風車は、止むことのない思索や感情の循環の象徴。語りは内省的で結論を急がず、イメージが次々と呼び合う構成が迷宮のような心理を提示する。抽象度が高い一方、身近な記憶の揺らぎに触れる普遍性があり、聴き手ごとに多義的な解釈を許す設計になっている。
歴史的背景
60年代後半のハリウッドは新しい映像表現と音楽の融合を模索。ノーマン・ジュイソン監督は分割画面などスタイリッシュな手法を多用し、緊張感と洒脱さを共存させた。ルグランはフランスで培った豊かな和声感と流麗な旋律を米国映画に持ち込み、バーグマン夫妻の英詞がそのイメージを言葉で精緻化。ヨーロッパ的洗練とアメリカ的ポップセンスの結節点として生まれたのが本曲である。
有名な演奏・映画での使用
映画版ではノエル・ハリソンがオリジナルを担当。その後、ダスティ・スプリングフィールドのカバーで広く浸透した。1999年のリメイク『トーマス・クラウン・アフェアー』ではスティングの新録が使用され、世代を越えて再評価が進む。フランス語版「Les moulins de mon cœur」も各国で親しまれ、ジャズ/ポップ双方の歌手や器楽奏者が多数の録音を残している。
現代における評価と影響
本曲は映画由来のポップ・スタンダードとして定着。半音階進行や巧みな転調、循環する旋律線はアレンジの自由度が高く、バラード、ボッサ、ジャズ、オーケストラなど多彩なスタイルに順応する。内省的な詞世界と歌い手の解釈が大きく作用するため、コンサートや録音で表現力を示す「試金石」として重宝され、教育現場でも取り上げられることが多い。
まとめ
『風のささやき』は、比喩豊かな歌詞、うねる旋律、洗練された和声が三位一体となった名曲。映画の文脈を超えて歌い継がれ、聴くたびに心の“風車”を回す力を持つ。時代を超える普遍性と、解釈の余地を残す構造により、今なお新しい表情を見せ続けるスタンダードである。